朝日新聞が、日中韓の3カ国で行った世論調査の結果を示し、中国の軍事的脅威よりも、日本の集団的自衛権の行使容認の動きを危険視し、牽制するような記事を7日付の紙面に掲載した。

まず1面の見出しで、「行使容認反対 63%」「集団的自衛権 昨年より増加」とし、日本の集団的自衛権について「行使できない立場を維持する」と答えた人が、日本63%、中国95%、韓国85%となり、「安倍政権が行使容認に踏み切る場合、中韓両政府だけでなく、両国民からも大きな反発を受けることが予想される」と伝えた。

また世論調査で、「東アジアの平和を脅かす要因として心配しているもの」について、日本では多い順に、領土問題63%、中国の軍事力48%、朝鮮半島情勢38%であることを示した。一方、中国では、日本の軍事力49%、領土問題36%、アメリカ軍の存在34%、韓国では、領土問題58%、北朝鮮情勢50%、日本の軍事力35%となっていることを伝えている。

また、「過去の歴史は…」という質問に、日本では「決着した」48%、「決着していない」47%と半々であるのに対し、中国ではそれぞれ10%、88%、韓国でも3%、97%であることを示し、「歴史認識 根強い不信」と見出しを立てている。

もちろん、マスコミが様々な世論調査をおこなって、ある地域・国の人々の意識を紹介することには一定の意義があるだろう。だが、この朝日新聞の記事が、国内外でどのような影響を及ぼすのか、ということに思いを馳せるべきだろう。

中国共産党の機関紙・人民日報の、電子版「人民網」は8日付で、朝日新聞の記事を取り上げ、「日本の民衆、安倍政権の右傾化に不安」と題した記事を紹介している。そこでは、朝日新聞の調査を分析し、日本の右傾化に対して中韓のみならず、日本人の多数も不安を持っていることを伝えた。

さらに人民網には、朝日新聞の記事を読んだ日本の識者のコメントが紹介されている。「河野談話」を発表した河野洋平・元衆院議長の政策秘書であった梁田貴之氏は、「安倍政権が中国と韓国に対して挑発的姿勢をとり続けていることに、日本国民が不安を感じているということだ」と指摘する。

また、『週刊金曜日』編集員の成澤宗男氏は、「安倍氏は日本の首相に返り咲いた後、一貫して大手雑誌、新聞、および右翼雑誌を通じて隣国に対する中傷に全力を挙げ、日本の民衆の隣国に対する敵対感情を煽ってきた」とした。まるで安倍政権が中韓を一方的に挑発し、東アジアに危機をつくり出しているかのような伝え方だ。

現実はどうなのか。3月5日に公表された2014年の中国の国防予算は前年実績比で12.2%増の8082億3000万元(約13兆4400億円)に達した。これは、4年連続2桁の伸びで、昨年の10.7%増という伸び率も上回っている。一方で、同年の日本の防衛予算は4.8兆円で、安倍政権になって微増したものの、長年、減少傾向が続いている。

現在、日本で高まっている集団的自衛権の行使容認の議論は、中国や北朝鮮という軍事独裁国家の軍拡から、国を守るためのものにすぎない。

朝日新聞の記事では、中国・韓国という反日教育が行われている国にスポットを当て、日本の脅威をことさら大きく取り上げているが、他の国々に同じ調査をすれば、まったく違った結果になるだろう。現に、アメリカ、インドネシア、フィリピン、オーストラリアなどの各国が日本の集団的自衛権容認の姿勢に賛同している。これらの国々は、中国の軍拡の脅威を、正しく理解しているからだ。

朝日新聞は自社の偏ったアンケート結果で国民の世論を誘導していると言わざるを得ない。そして、このような偏ったアンケートが中国の反日プロパガンダとして利用されていることを反省すべきだ。

また、日本の一部の学者や知識人にも、国益にかなった言動を切望する。日本人はこのような世論調査に誘導されることなく、世界の中での「日本の真の役割」を考えなければならない。

(HS政経塾 和田みな)

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