安倍政権樹立後、「中国や韓国が日本の右傾化を懸念している」との報道がなされたが、日本の防衛力強化に期待している国もある。フィリピン外相が安倍首相の就任直後、日本の再軍備を「強く支持する」と発言したことは記憶に新しい。その後の東南アジア訪問の際も、首相がインドネシアのユドヨノ大統領に「国防軍」を保有する考えを示し、大統領から賛同を得ていたことが29日に分かったと、30日付産経新聞が報じた。

首相は18日のユドヨノ大統領との会談で、集団的自衛権の行使を可能にすることや、憲法を改正して国防軍を保有する考えを示した。これについて大統領は「完全に合理的な考えだ。防衛力を持った日本は地域の安定にプラスになる。全く賛成だ。何の問題もない」と賛同を示した。

日本政府側は、「国防軍」保有を表明することが第二次世界大戦の記憶から反発を招くことを懸念したという。しかしインドネシア側は、日本が集団的自衛権を持つことで東南アジアにおける中国抑止力が強まると認識しているとみられる。安倍首相は、ベトナムのグエン・タン・ズン首相とタイのインラック首相にも集団的自衛権行使を可能にする考えを示し、両首相から異論は出なかったという。

東南アジア各国が日本の国防強化を歓迎するのは、南沙諸島をめぐる領有権争いなどで中国の脅威が現実化しているからだ。米軍も予算削減にさらされるなか、日本の役割強化に期待が高まっている。

一方、村山富市元首相ら日中友好協会代表団は29日、中国共産党政治局員の李源潮氏らと会談。李氏は日本の若い世代の「右傾化」に懸念を示した上、日本の侵略について謝罪した「村山談話」を持ち上げた(29日付共同通信)。安倍首相が新たな談話を出すことを牽制したものだろう。村山氏らの訪中は、鳩山元首相、公明党山口代表に続いて外交を混乱させるだけであり、百害あって一利なしである。

だが、首相は28日の所信表明演説で、集団的自衛権の行使容認や憲法改正、尖閣諸島の問題について具体的に言及しなかった。外交の場で明言したことを自国の国会で言わなかったことには、不安が残る。安倍首相は、他国や国内の反日的勢力に屈することなく、自衛権を行使することは主権国家として当然の権利であると内外に発信し続けるべきだ。(晴)

【参考記事】

2013年1月19日付本欄 「法の支配」で中国を牽制できるのか? 安倍首相が対ASEAN外交5原則

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5482

2013年1月16日付本欄 【そもそも解説】集団的自衛権って何?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5468