2月7日は、「北方領土の日」である。安倍晋三首相は、元島民や2世が北方4島の返還を求める「北方領土返還要求全国大会」に出席した後、ソチ五輪開会式に向かう。しかし、米英などの一部の欧米諸国は、政治的抗議から開会式を欠席する。同性愛を規制する法律を制定するなどの人権侵害を続けるロシアに、各国首脳が反発したためだ。政治的対立があるなか、安倍首相は開会式出席を決断した。

出席の狙いは、ロシアとの関係を深め、北方領土の返還や資源調達などの重要課題を前進させたいためであるが、ロシアの側も日本との関係を重視している。その理由の一つとして、近年、北極を巡って中国との間で摩擦が起きかねない事情がある。

ロシアは2008年、「北極におけるロシア連邦の国家利益の擁護」と題する安全保障会議を開き、北極を重視する戦略を打ち出した。北極に眠る天然ガスや石油などの資源開発を進めるほか、北極の氷が解け始めたことで、アジアとヨーロッパを結ぶ北極海を通過する航路の開設を進めるつもりだ。北極航路ができれば、中東の海賊問題や沿岸諸国との国際関係の悪化などのリスクがなくなり、海運革命が起きると言われている。ロシアは、北極航路を通過する外国商船に、自国の砕氷船を帯同させることでも、利益を得ることができる。輸入に依存する日本としても、より安全なルートを選択肢として持つことができ、リスク分散できる。

こうした可能性がある北極を狙って、中国も北極に触手を伸ばし始めている。

中国は、ロシアとは別に、北極中央を通過するルートの開設を進め、北方への進出を模索。また、2008年に中国海軍の艦艇が、日本海から宗谷海峡を通過するなど、海軍の動きも活発になってきた。こうした中国の海洋進出を意識したためか、昨年には日本と外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を初めて行い、安全保障の連携強化を確認。日本にとって、ロシアとの外務・防衛閣僚協議は、アメリカ、オーストラリアに続く3カ国目であり、領土や外交問題があることを考えれば、異例のことだ。日露首脳会談は、昨年だけで4度に及び、両国の関係は密接になりつつある。

中国の脅威は、沖縄周辺の南だけではない。将来的には、北方での安全保障上の問題が起きる危険がある。そうした意味でも、ロシアとの関係は重要となる。中国の拡張を牽制するという共通の目的を通して、日露関係をさらに強化し、対中抑止力の強化と北方領土の返還に弾みをつけるべきだろう。(慧)

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