人口減少が続くロシアの極東地域では、多数の中国人の流入が進み、脅威となっている。同地域のアムール州政府は出稼ぎ中国人による農業を禁止しているが、法律の目をかいくぐって多くの中国人が農場経営に進出している状態が続いている。このほど産経新聞が報じた。

同州政府は出稼ぎ中国人による農業を禁止し、違法な農薬使用や不法滞在の中国人の摘発を始めている。しかし現実には、ロシア人に名義を借りて農地を借り、「合法的」に農場を経営する中国人が後を絶たない。この背景には、中国人からのリベート(世話代)を受け取っているロシアの役人がいるとの見方もある。ロシアにとっては、「中国を無視しては経済が成り立たない」からだ。

そこでロシアが期待するのが日本の参入だ。

アムール州政府と北海道銀行は4月、農業分野での協力覚書に調印。すでに、日本の寒冷地農業技術を導入して大豆とソバの試験栽培が始まっている。今後、畜産や野菜の栽培技術を日本から取り入れて生産効率を向上させ、農業生産物を日本などに輸出する構想を立てている。ロシアの本音は「高い技術力を持つ日本ともっと仲良くしたい」というところにあるのだろう。

実際、ロシアの輸出の7割以上がエネルギー資源であることからも分かるように、同国では資源以外の産業が十分に育っていない。日本が農業や工業分野で極東地域に進出すれば、資源依存のロシア経済の構造を変えることにつながる。

一方で日本は、長年にわたる北方領土の問題や旧共産主義国、言語の違いなどの点で、ロシアへの進出にはやや及び腰の面が見える。しかし、両国共通の懸念となっている中国に対する包囲網を築く意味では、そうした壁を乗り越え、ロシアへの投資をもっと積極的に行い、同国の経済成長を促すことが必要だ。

結局、日露が協力を深めていくことが中国のけん制となり、ひいては両国の経済の成長を促すことになる。日露協商の締結を実現させ、経済分野での協力を深めながら、国同士の信頼関係を構築していくことが、両国と地域の明るい未来を拓くことにつながる。(晴)

【参考書籍】

幸福の科学出版 『国家の気概』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=114

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