安倍晋三首相がハイペースで外遊を続けている。安倍首相は首相就任後の約1年間でのべ33カ国を訪問した。今月9日から15日には中東・アフリカの4カ国を訪問したばかりで、22日からはスイスとインド、2月には冬季五輪の開催地であるロシア・ソチへの訪問を予定している。

21日付東京新聞によれば、外務省は2013年度の首相分の外遊予算に約4億円を盛り込んでいたが、あまりの外遊の多さにすでに予算がオーバーしているという。そこで、同省は他の予算から1億5千万円を集めて対応することになったという。

"税金の無駄使い"をやゆする声もあるが、このように安倍首相が積極的に外遊を進める背景には、日本の活躍に対する世界中の期待がある。

中東・アフリカの4カ国(オマーン、コートジボワール、モザンビーク、エチオピア)への訪問では、安倍首相は大きな歓迎を受けた。コートジボワールのウワタラ大統領主催の晩餐会は、当初出席は5人程度と見られていたが、ふたを開ければ西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)15カ国中11カ国の首相が集まった。またウワタラ氏は、日本の国連安全保障理事国入りを支持したという。

安倍首相はオマーンのカブース国王と、海賊対策などを含む海上安全保障分野での協力強化・防衛交流の促進について合意。コートジボワールでは警察力の強化などに使う約770万ドルの支援や、日本企業の投資を促すための人材育成などを表明した。また、モザンビークでは首都に建設する複合式火力発電所に、172億6900万円を限度とする円借款を行うことを決定した。

アメリカの影響力低下と時を同じくして、アフリカでは最近、中国の進出が顕著になってきている。しかし中国の支援は「新植民地主義」という批判もあり、現地の評判はよくない。中国の経済援助の狙いは見返りに資源を獲得することで、支援の際は中国人労働者を大量に投入するため、地元の雇用につながらないばかりか技術移転も行われないことが多い。

一方、日本の支援は人材育成や技術支援も含んだものだ。安倍首相もエチオピアでの内外記者会見で「日本は人材を育成し、日本の経験を伝え、ともに汗を流すことで自力で立ち上がる支援を行っている。このやり方こそアフリカの未来への投資だと理解いただいている」と中国との違いを強調している。

小泉内閣以降は、首相が1年ほどで相次いで交代していたため、日本の外交にも空白が生じた。その空白を埋めるように、安倍首相は米中の首脳を上回るテンポで海外に出かけている(表参照)。

アメリカの力が弱まるにつれて、日本は民主主義と自由主義を奉じる世界の大国として、各国を導いていく立場に立たねばならない。安倍首相の積極的な外遊は、日本が実際にそうした責任ある立場に立ちつつあることを示している。中国は人口が多く、経済規模も大きいが、人権を抑圧する軍事独裁国家である以上、世界を牽引する存在にはなりえない。その意味で、安倍首相には、日本が世界のリーダー国となるべく、積極的に外交を進めてほしい。(飯)

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2013年12月19日付本欄 【注目記事】月刊「WiLL」にアフリカレポート記事 アフリカは日本に来てもらいたい?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7120

2013年5月20日付本欄 日本がアフリカと初の資源閣僚会合 中国の独裁輸出を防げ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6048

(表)

日米中首脳の外遊記録

安倍晋三首相

2013年

1月

ベトナム、タイ、インドネシア

2月

アメリカ

3月

モンゴル

4~5月

ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ

5月

ミャンマー

6月

ポーランド、イギリス(G8首脳会議)、アイルランド

7月

マレーシア、シンガポール、フィリピン

8月

バーレーン、クウェート、ジブヂ、カタール

9月

ロシア(G20首脳会議)、アルゼンチン(IOC総会)、カナダ、アメリカ(国連総会)

10月

インドネシア(APEC首脳会議)、ブルネイ(ASEAN関連首脳会合)、トルコ

11月

カンボジア、ラオス

2014年1月

オマーン、コートジボワール、モザンビーク、エチオピア

(首相官邸ホームページなど)

オバマ米大統領

2013年

3月

イスラエル、パレスチナ、ヨルダン

5月

メキシコ、コスタリカ

6月

イギリス(G8首脳会議)、ドイツ、セネガル、南アフリカ

7月

タンザニア

9月

スウェーデン、ロシア

12月

南アフリカ

(「ホワイトハウス」ホームページ、米ワシントン・ポスト紙など)

習近平・中国国家主席

2013年

3月

ロシア、タンザニア、南アフリカ、コンゴ

6月

トリニダート・ドバゴ、コスタリカ、メキシコ、アメリカ

9月

ロシア、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス

10月

マレーシア

(「人民日報」日本語版など)