教科化が進む道徳教育について、「価値観の押し付け」との批判もあるが、道徳教育には感謝の大切さを教えるなど、普遍的なメリットがある。子供の感謝の気持ちに関する研究が増えていると、このほど、米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版。以下、WSJ紙)が取り上げた。研究によれば、感謝する習慣を身につけた子供は、そうでない子供より幸福感が増すのだという。

スクール・サイコロジー・レビュー誌に今年掲載予定の研究は、「与えること」について一週間の講座に参加した小学生のその後の変化について紹介している。PTA行事で「感謝の手紙」を書く機会があった時に、自発的に書いたのは、受講者で44%だった一方、受講しなかった子供では25%にとどまった。感謝の気持ちは教えることができ、影響は実際の行動に現れるということが分かった。

またWSJ紙は、感謝する習慣を持つ子供の方が、幸福な毎日を送っているという研究も紹介している。ジャーナル・オブ・スクール・サイコロジー誌に2008年に発表された調査では、小学校6年生と中学1年生を対象に、2週間にわたって、「感謝すること」を毎日5つずつリストアップするよう指示されたグループと、同様に「困ったこと」をリストアップしたグループとを比較。すると、感謝することをリストアップしたグループの方が、学校生活について前向きな見方をするようになり、暮らしの満足度も高まったという。

さらに別の研究では、感謝の気持ちが強い生徒の方が、そうでない生徒よりも成績が良いという傾向がある上に、落ち込んだり嫉妬したりすることが少なく、ものの見方がポジティブであることも分かっている。

これらの研究は、道徳教育のあり方について議論が進む日本にとっても、示唆に富む。

日本では相次ぐいじめによる自殺などを受けて、政府の教育再生実行会議が、小中学校で道徳を正式な教科とすることを検討している。道徳教育の推進は「価値観の押し付けになるのではないか」との批判も出ているが、これは戦後、教育から宗教が切り離されたことで、宗教的な要素を持つ道徳教育に対し、教師がアレルギーを持ってしまったためだろう。

しかし、成長途中の子供は、善悪の価値観や感謝の大切さを教えられるからこそ、その重要性に気づくのだ。「感謝」一つをとっても、その対象は家族から社会、さらには神仏といった、この世を超えて人間を生かしている存在へと広がってゆく。道徳教育は本来、宗教教育と切っても切れないものだ。教えないことで子供を狭い世界に閉じ込めるのではなく、自信を持って道徳教育を行い、感謝の心に満ちた子供を育てるべきだろう。(晴)

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