下村博文文部科学相は1日、文部科学省作成の小中学生向けの道徳補助教材「心のノート」の改定に関し、偉人伝を導入する考えを示した。これは衆議院予算委員会の答弁で「偉人は歴史、国境を超えて人が人として生きる道標として参考になる」と発言したことで明らかになった。

偉人について教育することは、規範意識を高めるほか、自助努力を肯定することにもなる。教育改革の方向性としては、歓迎したい。

「心のノート」は2002年に全国の小・中学校に配布された。1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめ、悪質な少年犯罪が多発していたことで、「心の教育」の重要性が叫ばれていたことがきっかけとなっている。民主党政権下で全員への配布が中止していたが、今年1月に全員配布が復活することが決まった。今後、「道徳教育の教科化」とともに、内容の改定が議論される。

東京都教育委員会でも、4月から都内の公立小学校で使用する道徳教材で故事成語や格言、偉人を取り入れたものを使用することを決定している。都教委は「規範意識や自立心などを育めるよう工夫した」とコメントしている。

これまでの公立学校では、社会や国語などの教科でも偉人について積極的に教育してこなかった。その大きな要因に、教育界に日教組をはじめとする左翼的な思想が広がっていたことがある。左翼思想の基本的な考え方は「結果平等」である。そのため、「刻苦勉励した人が、社会を変えるリーダーとなる」という思想ではなく、「名もない市民が力を合わせ、世の中を変えた」という考え方をとりがちなのだ。

しかし、歴史を見れば明らかなように、「世の中を良くしよう」「国を発展させよう」と考え、行動するリーダーがいてこそ、国民は一致団結することができる。偉人を認め、偉人を肯定しなければ、教育によって、国の方向性を示すリーダーを育てることは難しい。人は尊敬する人物のようになりたいと思って努力するものだ。そのモデルとなる偉人伝を教えなければ、子供たちも夢を持つことができないだろう。

当初、文科省が「心のノート」を作成した目的は、児童生徒が「生命を大切にする心」「他人を思いやる心」「善悪の判断」などの道徳性を身につけるためであった。そのためにどうしても必要なものが、「宗教教育」である。偉人伝を取り上げる際には、彼らの信仰の姿についても、しっかりと教えてもらいたいものだ。(晴)

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