2013年12月号記事
The Mission of University
大学の使命
なぜ、新しい学問の創造が必要なのか
contents
part3
時代が求める新しい「経営成功学」
国内企業の7割が赤字、アメリカでもMBA取得者が経営する金融機関がつまずくなど、既存の「経営学」に疑問符が付き始めています。そんな中で注目を浴びているのが、大川総裁が説く「経営成功学」です。
現在、日本の企業の7割が赤字です。赤字企業は法人税を免除されているので、企業の7割が法人税を払っていません。
一方、法人税から逃げるために、黒字なのに赤字に見せかける「ニセ赤字法人」も横行しています。昨年6月までの3年間で、1万8千件が確認され、申告漏れの総額は2兆4千億円に達しました。悪質なコンサルタントや税理士が、企業と協力して「脱税」を「節税」と見せかけるケースも多いようです。
高い税金をかける政府の問題はさておき、 「企業の7割が赤字」「ニセ赤字法人の横行」という現状は、大学教育における「経営学」が役割を果たせていない現実の一端を表しています。
持てはやされるMBA
海外にも視野を広げると、経営の分野で持てはやされているのが「MBA(経営学修士)」です。これはアメリカを中心に広がった学位(注1)で、主に経営幹部を目指す社会人が1~2年程度、経営大学院(ビジネススクール)に通い、経営や人事戦略、財政などを学びます。
MBAを取得できる大学院は世界中で600校(注2)を超え、中でも米ハーバード大学ビジネススクール(HBS)が有名です。また、少なくとも400万人のMBA取得者が世界で活躍しており、特にアメリカでは、取得者の給与が他の修士課程の修了者と比べて30%高く、学士のほぼ倍とも言われます。
このようにMBAには、取得した人がすぐに経営幹部として活躍し、企業を正しく導いて発展させる「魔法の杖」というイメージがあります。しかし、そうした点に警鐘を鳴らす人が多いのも事実です。
MBAの授業の多くを占めているのが、ビジネスの実例を題材にしたケーススタディによる訓練です。グループ間で、「このような問題に直面したら、どう判断するか。そして、なぜそう判断したか」という議論を、様々なテーマで繰り返し戦わせます。
マイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」を学生同士で行うようなイメージだと指摘する識者もいますが、高度な知識を学ぶ場でなく、決断する訓練の場という意味合いが強いようです。
ある取得者の男性(50代)は「ケーススタディを学んでも、実際のビジネスで同じような問題に直面する保証はなく、1つの知恵であって万能と考えるのは危険」と指摘します。