2013年12月号記事

The Mission of University

大学の使命

なぜ、新しい学問の創造が必要なのか

少子化の影響で、日本は今や、入る先を選ばなければ誰でも大学生になれる「全入時代」。大学の価値が低下し、改めてその存在意義が問われています。幸福の科学は2015年に「幸福の科学大学(注)」の開学を目指しており、同大学の創立者である大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁によって大学や学問のあるべき姿を提言する多くの法話が発表されています。そこで本誌では、大川総裁の法話を参考に、「学問の本来のあり方」、そして、「大学の使命」について考えます。

(構成/村上俊樹、取材・文/只木友祐、小川佳世子、山下格史、馬場光太郎、居島有希)

(注)同大学は、2014年3月、設置認可申請予定。


contents

  • 大川隆法総裁法話レポート・大学の理念を語る
  • 「人間幸福学」の理念とは
  • 時代が求める新しい「経営成功学」
  • 科学と宗教を融合する「未来産業学」
  • 野田一夫氏インタビュー「未来を創る力」を育てよ
  • 大学の使命とは

「大学全入時代」到来──。

競争率の高い有名大学はともかく、大学生になるだけなら、それほど勉強しなくてもいい時代になりました。「みんな行くし、大学くらいは……」という空気にも後押しされ、ここ数十年、大学への進学率は急上昇しました(図1)。

その副作用と言うべきか、大学生の「質の低下」が叫ばれるようになっています。授業中に寝る、"内職"をする、スマホをいじるなどは当たり前。アメリカなどと比較しても、日本の大学生の勉強不足は一目瞭然です(図2)。長年、現場で大学生に接している浦和大学の仙波洋史教授(情報システム学)は、本誌の取材に次のように語ってくれました。

「大学生の学力は明らかに落ちていますね。また、催促しないとレポートを提出しない学生も多く、意欲や真剣さの問題も感じます」

しかし、学生ばかりを責めることはできません。彼らが勉強しないのは、大学で教わる学問が"死んでいる"ケースもあるという事情もあります。 レジュメを読み上げるだけの授業、成績評価がいい加減な授業、時代遅れの内容を教えている授業など、授業の質の問題も指摘されています。刺激的で役に立つ知識が学べず、学生のやる気が下がるのも無理はありません。

入学時の学力はともかく、大学で生きた学問を教えて学生の学力と教養を高めることに、大学の存在意義があります。受験者が減り、経営危機に陥る大学も続出している今、 教育する側も「自分たちは何を研究し教育すべきなのか」「そもそも学問は何のためにあるのか」を考え、大学の使命を取り戻さなければなりません。

私たちは今、未来の学問の姿、そして、大学の使命とは何かを改めて考え直すべき時期に差しかかっているのです。


part1

大川隆法総裁 法話レポート

大学の理念を語る

本来、大学はいかにあるべきなのでしょうか。

そして、これからの学問はどうなっていくのでしょうか。

幸福の科学大学創立者の大川隆法総裁が

大学設立の理念と理想の学問について説いた法話を紹介します。

「新しき大学の理念」

9月20日 幸福の科学教祖殿 大悟館

幸福の科学大学設立の理念

大学は新文明の発信基地であり新しい学問を創造する場

大学全入時代において新たな大学を設立する意義と、幸福の科学大学の発展ビジョンを、創立者自ら語った。

現在の大学の限界と目指すべき大学の理念

大川総裁はまず、日本が先の大戦を経た後 「国家としてのアイデンティティや未来ビジョンが見えなくなってきた」 が、既存の大学ではそのニーズが満たせなくなっていると指摘。「日本独自のオリジナルな文化を発信できるようなものが必要」であり、そのためには 「新文明の発信基地としての大学」「新しい学問を創造するための大学」 を新たに設立し、日本の発展・繁栄に尽くせる人物を教育する意義を力説した。

また、現在の大学ではすでにできたものを習得することはできるが、 「新しいものを創造していく精神や考え方が弱い」 として、 「創造性」「チャレンジ精神」 を中心に据えた学問をつくりあげていきたいと理想を語った。

宗教をベースにして人間の幸福を研究する

幸福の科学大学では、「人間幸福学部」「経営成功学部」「未来産業学部」の3学部の開設を予定しているが、その中でも特に、「人間幸福学部」は、「幸福の科学」学を宗教的側面のみならず、専門知識やスキルとしても使えるよう研究を進めるという。

「人間の幸福とは何かを追究しているので、個人の幸福から社会全体の幸福、国際的な正義の確立や調和、秩序の作り方まで入ってくる」

その意味では、実用性を重視しつつ、諸学の基礎にある道徳的基盤、宗教的基盤をカバーする幅の広い学問となる。

「『人間幸福学』とは何か」

9月26日 幸福の科学総合本部

「人間の幸福」という視点から、あらゆる学問や活動を再構築する

幸福の科学大学の“心臓"部分ともいうべき「人間幸福学部」。大学創立の理念とも関わる「人間幸福学」とはどんな学問なのかが語られたのが本法話だ。

大川総裁は、 「『人間幸福学』というテーマから見て、あらゆる学問やこの世の活動について再整理し、再構築し、もう一回考え直してみる必要がある」 と語り、「人間の幸福」があらゆる考察の原点であるとした。

大川総裁はこの「人間幸福学」について、 「(幸福の科学の教義や活動を)一般化した学問のかたちで抽出し、反復学習に堪え、いろいろなかたちで応用できるものにできないかという試み」 と説明。

宗教の対立や倫理を欠いた科学の暴走、先の見えない国際紛争という現代の諸問題を解決するためにこそ、「神の心はどこにあるか」を探究しなければならない。宗教でありながら時事問題にも常に指針を示す、幸福の科学の教えを学問化することの意義もここにあると言えるだろう。

人間幸福学はソクラテスの立場と同じ

大川総裁はまた、人間の幸福を探究しつつ、同時代の価値観を問い直していく人間幸福学は、ソクラテスの立場と同じであり「学問の始まり」への回帰でもあると述べた。

大川総裁は人間幸福学について 「他の『未来産業学部』や、あるいは『経営成功学部』をも、ある意味で包含している概念だと思います」 と述べ、人間幸福学の具体化として、さらに多くの学問が展開していくビジョンを示した。

「宗教学から観た『幸福の科学』学・入門」

10月9日 幸福の科学総合本部

教祖自身が教団を宗教学的に分析

「宗教学者も幸福の科学の分析はできない」

教祖、教義、組織などの側面から、いろいろな宗教を比較し研究していくのが「宗教学」だ。しかし、大川総裁は 「大学の宗教学者も、今、幸福の科学の分析はできないだろうというのが、私の率直な感想です」 と語り、多分野にわたる同教団の活動を、宗教学者たちが分析できずにいることを指摘。自らその役を買って出た。

大川総裁は、幸福の科学の活動について 「伝統的な言葉で言えば『悟り』というものを求めていくと同時に、悟った人間を主体として、一切の衆生の救済を目指す、地上仏国土ユートピアの建設を目指す」 運動であると総括。

さらに、教祖、教義、組織論などの観点から、幸福の科学の特徴を述べ、その際の比較対象として、創価学会、立正佼成会、生長の家、大本教、天理教など、他教団の分析も同時に行った。宗教学者にとっても必聴の法話だろう。

「プロフェッショナルとしての国際ビジネスマンの条件」

9月28日 幸福の科学総合本部

国際社会で通用する人物になるための指針

「人間幸福学部」に設置予定のコースで、海外で活躍する人材の養成に力を入れる「国際コース」での講義を念頭に置いた法話となった。

現在、政界でも財界でも、日本人が海外に出て行く機会が増えている。だが、大川総裁は、今のところプロの国際ビジネスマンだと自信を持って言える人材は見当たらないとして、そうした人物を幸福の科学大学から輩出したいとの願いを込めた。

海外での活躍を目指すうえで、まず必要となるのが語学力の鍛錬だが、それに加えて、語るべき中身が問われるという。

「仕事で使う専門を超えた部分でプラスアルファをたくさん持っている方は、やはり一目も二目も置かれて別扱いになる」

と、ニューヨークで国際ビジネスマンとして仕事をしていた総裁自身の経験から、教養の幅を広げることの大切さを力説した。

最後に、プロの国際ビジネスマンとして持つべき心構えを3点挙げ、 「自分の強みも弱みも知り、自分と異なるタイプの人も、愛し、理解し、集めようとしていかなければ、基本的に大きな仕事はできない」 と締めくくった。

「外国語学習限界突破法」

10月12日 幸福の科学総合本部

英語力向上には「勇気や責任感、人に喜んでもらいたい気持ち」が大切

国際社会での活躍を志し、語学力向上を目指す人たちに向け、「リスニング、スピーキング力の鍛え方」「第二外国語の上達法」などの4つの質問に答えた。

まず、基礎固めをするために、オーソドックスな文法学習が有効だとアドバイス。

「遠回りのように見えて、百年以上続いた(日本の)英語学習法の中には洗練されたものもある」 と、英語独特の表現や言い回しをマスターする努力を勧めた。

海外にいたとしても、英語だけで話したり聞いたりしている時間は1日に正味3時間程度なので、日本にいても留学や駐在をしているレベルの学力を身につける道はあると指摘した。

外国語の能力を向上させていくには、結局は学習を維持し続ける考え方が大切だとして、

「才能もありますが、勇気や責任感、人に喜んでもらいたい気持ちが、最後は勝つような気がしてならない」

「(レベルの)上限には限界がないので、志のレベル次第だと考えている」

と励ました。

「『経営成功学』とは何か」

9月24日 幸福の科学総合本部

「経営成功学」には「結果に対する責任」が入っている

幸福の科学大学に開設予定の「経営成功学部」の学部理念について説かれたのが本法話だ。

冒頭、大川総裁は学部の名称に込めた思いをこう述べた。

「『経営成功学部』においては、『経営』に『成功』という言葉を付けたわけですが、これは、『結果に対する責任』が入っていることを意味しています」

現在、日本の企業の7割が赤字だが、通常、一般社会で「7割失敗しても構わない」ということは成り立たない。その意味で、この名称は、既存の経営学が果たせていない役割を、「経営成功学」によって果たそうという強い意思の表れと言える。

経済活動は人間の幸福を大きく左右する。この経営の分野で大きな「成功」を収めることで、人間の「幸福」を大きくしていこうというわけだ。

「会社を発展させるための『志』を持ち続ける」

JALの再建に尽力した稲盛和夫氏は、京セラや第二電電(現KDDI)を創業したことで知られるが、大川総裁はこの点に言及し、次のように述べた。

「経営成功学では、『経営は、なぜ失敗し、なぜ成功するのか』ということを見極める方法を教え、『どうやったら、あらゆる業種において経営に成功していく方法をつくることができるか』というテーマに挑んでいきたい」

また、経営成功の要諦の1つとして、この世に必要とされないものは潰れていくことを知ること、つまり、自分たちの会社の仕事を社会にとって必要なものにしていくことの大切さを強調した。

この「必要とされないものは潰れていく」という視点を持つことは、経営者にとって非常に重要だ。これは、業績が振るわないことを他人や環境のせいにすることなく、常に自らの責任と努力によって道を切り拓かねばならないという厳しさを受け入れることにもつながる。

大川総裁は、この法話を次の言葉で結んだ。

「会社を発展させ、未来に存続させるための『志』を持ち続けることが極めて大事ではないでしょうか」

「十割の企業が黒字体質になる方法」 をつかみ出すための、新しい経営学の枠組みが、ここに示された。

「経営の創造」

10月1日 幸福の科学総合本部

「経営成功」に向けた具体的実践のヒント

法話「経営の創造」では、経営者や新たに事業経営を志す人を念頭に、「経営成功学」の具体的な実践のヒントが示された。

大川総裁は、自らの適性の見つけ方、事業の種の探し方、イノベーションの方法、人材の養成法など、成功を続けるための着眼点を、自身のエピソードを交えながら具体的に語った。

「未来創造学入門」

10月3日 幸福の科学総合本部

未来社会を設計する、政治体系、政治哲学の探究

幸福の科学大学では、従来の法律学、政治学の枠組みを超えた「未来創造学」という学問を構築しようとしているが、一体どんな学問なのか。

財産権の保証は人間の自由を担保する

法律の制定や政治議論を重ねることは、今後の国家のあり方を構築していくことでもある。大川総裁は、未来を見通した時どんな政治哲学や法律体系が望ましいかが固まれば、 「それぞれの国において、違ったアプローチで未来社会の幸福が構築できるのではないか」 と、学問の意義を語った。

大川総裁は、 「『自由と平等のどちらを取るか』と言われたら、やはり、自由を取ったほうが幸福度は高い」 (『 救世の法 』)と、政治の根底に置くべき哲学として自由を重視する。

米議会では、オバマケアをめぐる対立で予算が成立せず、予算執行停止となったが、これは自由を巡る問題でもある。

財産権は、各人の自由に密接に関係する。財産を奪われれば、行動の自由や出版の自由はなくなるだろう。

オバマケアで、貧しい人も「平等」に医療を受けられたとしても、多額の税金が必要となって「自由」が圧迫されるなら問題だ。

日本の増税問題についても、

「『税と社会保障の一体改革』は幻想です。これを言ったらもう無限に(税金が)取れる」 と、安易な増税に警鐘を鳴らした。

自由を生かす道徳律

また、自由の確保と共に、それを正しく生かす道徳律が不可欠だとして、目指すべき社会のあり方を以下のように示した。

「良心に基づいて自分の行動をほかの人がまねてもいい社会、それが自由な判断のなかで自ずから行われるような未来社会を創っていきたい」

社会科学分野においても、根源なる哲学がなければ、方向性を間違う。人々を幸福に導く新たな学問の構築が待たれる。

「『未来産業学』とは何か」

9月27日 幸福の科学総合本部

「新しいフロンティアを切り拓け」

幸福の科学大学に開設予定の理系学部が「未来産業学部」だ。従来の理系学部とは何が違うのか、その特徴が説かれた。

大川総裁は、社会を豊かにすることで、政治、外交、軍事の問題を解決するという理系の役割を示し、光や空気を制御する「植物工場」や「代替エネルギー」の可能性を語った。

また、宇宙開発を急ぐべきという方向性も提示。特に現在、科学者たちが理論的に可能性を模索している「ワープ航法」に関しては 「多次元宇宙が存在することが分からなければ、宇宙航行や、ワープの技術等は発明できない」 と述べた。最新の理論物理学で、高次元世界の存在が示唆されているが、それがどのような世界かは、分かっていない。一方、幸福の科学では、悟りに応じた宗教的世界観である「霊界の多次元構造」が詳細に説かれている。大川総裁は、宗教と科学が共同して研究する必要性を強調した。

また、理系が唯物論者を生みやすいことに関しては、 「自分たちが研究対象として、まだ十分に使えないものに対しては、もう見ないというふりをして、能力を収斂させた」 と、現代科学の限界にも言及した。

最後は、 「『既にあるものを使う理系などは必要ない。新しいフロンティアを必ず拓こうと思え』というのが創立者の願いです」 と、「未来産業学部」が未来文明の源流となるビジョンを語った。

「宇宙人のリーダー学を学ぶ」

10月2日 幸福の科学総合本部

「救世主は、それぞれの星に必ず存在します」

大川総裁は「霊界」や「宇宙人」への認識が浸透するにつれて「宇宙の法」を明かすと予言している。本法話では、その「宇宙の法」の最終段階的な内容の一端が明かされた。

今回説かれたのは、宇宙レベルの帝王学というべき教えだ。 「メシア、救世主と言われる存在は、それぞれの星に必ず存在します」 と、宇宙にある多様な星にはそれぞれ偉大なリーダーがいることと、そのリーダーの条件が明かされた。

各星の文明リーダーは、「多次元宇宙」「時間の循環」「パラレル・ワールド」など、驚くべき時空の認識を持っているようだ。

さらに、宗教的にも 「未知なるものを愛する経験ができる」「大宇宙の神仏は、宇宙のありとしあらゆるものの発展・繁栄を願っておられるということが、神意として感じられる」 などの高い境地にあることを明らかにした。