国内の原発で、唯一稼動していた関西電力大飯原発4号機が、15日の定期点検入りにより停止した。再稼動は早くても年明けとなる。

一部言論の中には、この1年2カ月ぶりの「原発ゼロ」を評価し、各基が再稼動を予定していることに、反対を表明する声もある。

16日付東京新聞では、この夏の電力需給を調査した上で「需要が電力供給の95%を越す日は無い」「東日本はかなり余力があり、西日本では一部で厳しい日もあったが、大半は問題が無かった」と振り返った。記事中で植田和弘・京大大学院教授は「需給だけをみれば、原発は必要ないことがはっきりした」と言い切っている。

しかし、使用率95%ともなれば異常事態だ。こうした議論は、需給水準をそれ以下にキープするため、どれだけの犠牲が払われていたかを無視している。経営的に極限状態の中にある各電力会社、節電のため熱中症で病院へ運び込まれた高齢者、電気料金上げに苦しむ中小企業、など無数の人々がこの需給水準の裏にいる。そうした人たちの前で「原発を止めて問題は無かった」と、本当に言えるのだろうか。

また、原発停止分を賄うため、火力発電は異常に酷使されている。いつトラブルを起こすかわからない状況だ。関西は今夏、6基の火力発電の定期点検を先送った。需要が減る深夜や週末に最低限の補修でしのいでいるという。

火力発電派の依存は、経済にとっても大打撃だ。主力燃料である液化天然ガス(LNG)の輸入が増える。円安となった分輸入コストもかさむ。燃料費の増加分は、2011年度から3年間で計9兆円を超えるという。消費税3%分の国富が海外に流出するということだ。 (14日付産経新聞)

上がった燃料費のしわ寄せは、電気料金値上げという形で各企業へ向かう。中部電力は14日、家庭用電気料金を5%~10%上げる方針を明らかにした。オイルショック後の1980年以来の値上げとなる。浜岡原発停止で燃料費負担が増加し、三期間連続する赤字が原因だ。これで、計6社が家庭用電気料金の値上げを予定していることになる。

電気料金値上げは、国内で99%以上を占める中小企業ほど直接の打撃を受ける。中小企業は、大企業のように自家発電設備などを保有してはいない。製造コストがかさみ、製品の値上げや、利益の減少につながる。従業員のリストラや所得減という形で経済全体に波及していく。

そこに、来年春の消費税税率引き上げが重なれば、日本経済は景気回復どころではない。駆け込み需要や株価上昇などの影響で、一部の経済指標に改善が見られるが、デフレ脱却も消費増加も起きていない。電気料金の増加と、消費増税の相乗効果で、歴史に記憶される経済的混乱が起きることは、容易に想像がつく。

原発停止は日本経済の「大事故」となっている。増え続ける犠牲を減らすためにも、政府は原発の早期再稼動に向けて全力を尽くすべきだ。(光)

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