自民党・高市早苗政調会長は17日の講演会で、「福島第一原発の事故によって死亡者が出ている状況ではない」と発言し、原発再稼働を進める考えを示した。しかしこれに対して、与野党や自民党福島県連などから批判が相次ぎ、それを受けて同氏は19日に発言を撤回し、謝罪した。

実際に、福島第一原発の事故で放射線被害による住民の死者は出ておらず、高市氏の発言は概ね事実に即していると言える。本誌でこれまで訴えてきた通り、「福島は安全」なのである。

先月末に開催された「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)の総会でも、「福島第一原子力発電所事故による放射線被曝で、健康影響は出ていない。住民の被曝量は少なく、今後も健康影響が出るとは考えにくい」(1日付読売新聞)との結論が出された。

民主党の細野豪志幹事長は「避難所生活でストレスを抱えて亡くなった方などもいる。完全に原発事故が原因だ」などと述べて、高市氏を批判している。しかし避難生活のストレスは、政府の無責任な避難指示によるものであって、原発事故が直接の原因ではない。

当時の菅政権は科学的根拠に基づかない避難区域を設定して住民を強制避難させ、現在も多くの人が避難生活を余儀なくされている。避難生活の心労や肉体的な疲労で亡くなる人は、現在でも後を絶たない。菅政権は東電の責任追及に躍起になっていたが、菅政権の判断責任こそ問われるべきだろう。

放射線による死者が出なかった福島事故を「チェルノブイリ級」と喧伝し、「報道被害」を生んだマスコミも罪深い。福島の線量は健康被害が出るレベルではなかったが、マスコミ報道が放射線の危険性ばかりを煽り、福島県の住民は多大な精神的被害を受けた。「福島は危険だから帰れない」と思い込み、いまだに多くの人が故郷に帰らないままだ。

マスコミは今回の高市氏の発言をめぐっても、「福島事故で住民に健康被害はでない」という科学的事実について論じることなく、「福島は怒っている」というトーンを演出して高市氏を吊し上げた。事実を隠蔽する一方で、真実を述べる人を「住民感情を傷つけた」と不当に批判するのは極めて悪質と言えるだろう。

一方で、高市氏が発言を撤回して謝罪したのは残念である。「放射線被害で亡くなった住民はいない」という事実を述べようとしたにもかかわらず、それが間違っていたかのような印象を与えてしまったからだ。「震災の報道被害によって、避難を余儀なくされ、避難所で亡くなった方もたくさんいる」と、報道陣に答えればよかったのかもしれない。

事故から2年以上が経ってなお、「福島は科学的に見て安全である」という事実を政府もマスコミもひた隠し、住民の帰郷を阻んでいるのは異常事態である。政府は早急に福島の安全宣言を発表し、住民の帰還を実現するべきだ。(原)

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2013年5月号記事 福島は安全だ 今すぐ我が家に帰ろう - 反原発にだまされるな

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2013年5月28日付本欄 やっぱり福島は安全だった 国連科学委「被曝による健康被害なし」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=6102