11日付米ウォールストリート・ジャーナル紙電子版に、「日本兵が中国人捕虜を脅している」という写真が掲載されている。しかしこれらは、捏造とされている写真である。

この写真は、"A Dangerous Rift Between China and Japan(中国と日本の間の危険な亀裂)"という見出しで書かれた外部識者の論考の参考として、"Tangled Histories(もつれた歴史)"と題された8枚の写真のうちの2枚だ。

まず、「日本兵が中国人捕虜を日本刀で脅している」と紹介されている写真は、『南京事件「証拠写真」を検証する』(東中野修道ほか、草思社刊)の中で捏造であると検証されている。この写真は至近距離から撮影されたものだが、日本軍は公開処刑を行っていなかったため、撮影許可が出たとは考えにくい。したがって、中国軍の様子か、演出された場面を撮影したものの可能性が高いという。

また、兵士が捕虜を柱に括りつけ、銃刀を向けている写真については、「日本兵と中国人捕虜」と紹介されている。しかし、兵士の服装が日本軍のものとは明らかに異なるため、これもでっち上げと考えられる。

さらに、今回の一連の写真の中には、日中戦争と同じ時期に起こった、中国国内の内戦である国共戦争中、「中国兵が中国人を処刑する場面」だとして紹介されているものがある。しかし、紹介のされ方が唐突であり、写真だけ見れば「日本兵が中国人を処刑している」という印象を与えかねない。

記事の本文も、日本に対する偏った見方に満ちている。「日本は歴史の大半では、中国を文明の中心であると尊敬してきた」「南京大虐殺で30万人が殺されたという数字はもちろん誇張されているが、日本がやったことの恐ろしさを少しも軽減するものではない」「安倍政権は憲法改正をし、アメリカから完全に独立しようとするタイプの古典的なナショナリスト」などの表現が続く。

外部の識者による執筆とはいえ、保守系のメディアとして知られるWSJ紙がこのような捏造写真や偏向記事を掲載するとは驚きであり、同紙の信用を著しく損なうものだ。

海外メディアのなかには、日本が憲法を改正し、自主防衛体制を築くことについて「ナショナリズムの再燃」と警戒する声も高い。これには中国側の日本を悪者に仕立てあげようとするロビー活動やプロパガンダ工作が入っていると見るべきだろう。

日本が世界に向けての意見発信が少ないこともこのような報道を許す一因だろう。日本政府やメディアも、日本の立場や正しい歴史認識について、世界に向けてもっと発信すべきである。(晴)

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