2013年2月号記事

ワシントン発
バランス・オブ・パワーで読み解く
伊藤貫のワールド・ウォッチ

(いとう・かん)

国際政治アナリスト。1953年生まれ。東京大学経済学部卒。米コーネル大学でアメリカ政治史・国際関係論を学び、ビジネス・コンサルティング会社で国際政治・金融アナリストとして勤務。著書は『中国の核戦力に日本は屈服する』(小学館)、『自滅するアメリカ帝国』(文春新書)など。

国際政治はバランス・オブ・パワー(勢力均衡)から逃れることはできない。アメリカの退潮、中国の台頭、北朝鮮の核武装──。日本の置かれた立場は確実に不利に傾いている。日本が主体的にパワー・バランスをつくり出すために、国際情勢をどう読み解けばいいのか。

第9回

オバマの好きな無人機による暗殺が「戦争犯罪」に?

──オバマ米大統領が中東問題で苦労しているようですね。

中東情勢はますます不安定化しています。イランは半年後には、「核弾頭製造に必要な材料を獲得する」と見られています。シリアとレバノンの内戦も悪化するばかりです。アメリカは「シリア政府が化学兵器を使ったら、軍事介入する」と脅しています。しかし「親米的」なはずのイラクは、イランと共謀してシリアのアサド政権に軍事援助しています。

エジプト内政も不安定化しており、「民主化」したはずのリビアは、実質的に無政府状態です。イスラエルとパレスチナの関係も最悪となり、イスラエルはパレスチナ領土における国際法違反のユダヤ人入植をますます増やしています。最近の中東情勢には、良いところがまったくない。

しかも国連は2013年に「米無人飛行機によるイスラム原理主義者の暗殺行為は、戦争犯罪の疑いがある」という調査を開始します。国連官僚と国連の法律顧問の多くは「無人機による暗殺は戦争犯罪だ」という意見ですから、アメリカは苦しいところです。