中国の都市部では大気汚染がひどい。政府が発表する数値が信用できないので、自分で汚染度を測定して自衛する人が増えているという。26日付米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンより。

  • 昨年5月、北京の市民活動家たちは2万5千人民元(約30万円)で空気環境測定器を購入し、毎日の測定値をインターネットで発表している。これが草の根の広がりを見せ、上海などでもボランティアグループが測定器を購入。ネット上の批判に押されて中国政府は最近、約30の主要都市に大気汚染度の測定を始めるよう命じた。
  • 伝えられるところでは、中国政府は過去5年間、20都市などで大気汚染度を測定してきたが、データは秘密にしている。1年半前には北京の米国大使館が屋上に測定器を備えつけ、測定値をツイッターで発表。中国政府は「社会的影響を与える」として自粛を申し入れたが米大使館は拒否し、今やその測定値が中国市民によって翻訳されて出回っている。
  • 世界銀行によれば、北京以上に大気汚染がひどい都市は少なくとも16あり、改善しようとしても人口増加、自動車の増加、絶え間ない建設による粉塵などで相殺されてしまう。WHO(世界保健機構)の2007年推計では、屋内外の大気汚染で寿命を縮めている中国人は毎年66万人。北京では過去10年間で肺がんの発生率が6割も増えており、この間の喫煙者数は横ばいなので原因は大気汚染だろう。
  • ある団体が昨年7月、ネットで申込めば誰にでも空気環境測定器を貸し出すサービスを始めたところ、今では2カ月待ちだ。団体側は言う。「役所が本当のことを言うのを待っていたら駄目です。自分で調べないと」

一党独裁国家では、例えば歴史を改ざんして国民の思想を統制することが可能だ。だが大気汚染のデータとあっては、隠蔽・改ざんしても国民が自分で測定すれば真実が分かってしまう。案外こんなところから、一般市民の間で政府への不信や不満が強まるかもしれない。(司)

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