国際政治学者
佐久間 拓真
(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。
「インド洋の真珠」と称される島国スリランカは、国家主権の根幹を揺るがす深刻な事態に直面している。
かつて「新シルクロード」とも呼ばれた中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の恩恵を受けるはずだったこの国は、現在、中国による「経済的侵略」の象徴的な事例として世界中で議論の的となっている。その実態は、甘い融資の裏に潜む「債務の罠」であり、戦略的なインフラ支配を通じた主権の実質的な侵害である。
巧妙に仕掛けられた「債務の罠」
スリランカが陥った苦境の象徴が、南部にあるハンバントタ港である。かつてのマヒンダ・ラジャパクサ政権下で進められたこの港湾開発は、事業の妥当性や経済的な採算性を度外視して強行された。
中国は多額の融資を、国際的な金融機関よりもはるかに緩い審査基準で提供した。しかし、完成した港は当初の予測に反して貨物量が伸び悩み、スリランカ政府は巨額の債務返済に行き詰まることとなった。
この窮状を突く形で中国が要求したのが、債務の圧縮と引き換えにした港の「99年間にわたる運営権の譲渡」である。2017年、返済不能に陥ったスリランカ政府はついに屈し、ハンバントタ港の支配権を中国国有企業に明け渡した。これは単なる経済協力の失敗ではなく、経済力を武器にした事実上の領土的・戦略的奪取と言わざるを得ない。





















