《ニュース》

約20年にわたり脱炭素の先頭を走ってきた欧州で、再エネ政策が経済に悪影響を及ぼし、産業の足枷になっていることが目に見えて明らかになったと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じています(9日付)。

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欧州はこれまで、CO2(二酸化炭素)の排出に炭素税を課し、太陽光・風力発電に補助金を出し、化石燃料発電所を大量閉鎖するといった再エネ推進政策を世界で最も意欲的に進めてきました。

欧州の政治指導者は当初、「再エネへの移行が電気料金の低下や雇用の増大をもたらす」としてきましたが、WSJは再エネ導入が電力価格を押し上げる要因となり、経済停滞を招く結果が出ていると指摘しています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、ドイツは家庭用、イギリスは産業用の電力価格が、先進国で最も高いことが分かりました。欧州連合(EU)諸国の重工業向け電力価格の平均は、アメリカの約2倍、中国の1.5倍と高い水準で推移しています。WSJは、価格高騰の原因の大部分が、再エネ転換によるコストの増大であると分析しています。

欧州ではエネルギー価格の上昇により、生活費が高騰し、産業の誘致も困難となっています。エネルギーコストの高さを理由に、ドイツやイギリスをはじめ欧州から、石油や化学、AI関連の工場が相次いで撤退しており、英政府のエネルギー政策に助言するディーター・ヘルム氏(オックスフォード大学教授)は、「われわれは産業を流出させている」と懸念を示しています。

こうした中、欧州各地でネットゼロ計画(2050年までにCO2排出量の実質ゼロ計画)の延期や中止が相次ぎ、ドイツ政府は新たなガス火力発電所の建設を決定するなど、再エネ政策を見直す動きも出ています。

再エネ政策が予想外のコスト高をもたらし、産業の弱体化を招き、国民に大きな負担を強いている現実が明るみになる中、欧州は見直しの潮目を迎えています。

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