《ニュース》
高い出生率を誇ってきたフランスで、2025年の出生数が死亡数を下回る「人口の自然減」の恐れがあるとして、話題を呼んでいます。
《詳細》
フランスの国立統計経済研究所(INSEE)は7月、2024年6月から25年5月までの1年間で、出生数が約65万人と、死亡数(65.1万人)をわずかながら下回ったと発表しました。これは戦後初めてのことだといいます。特に2025年1~6月で見ると、出生数31.7万人に対し死亡数は33.1万人であり、1万人以上も人口が減少しています。
この発表をめぐり、専門家からも「人口減少が加速している」と驚きの声が上がっています。仏人口統計学者のジュリアン・ダモン氏は、「人口統計上の大きな変化が起こっているが、これはINSEEの分析では2035年に起こると想定されていた」と述べています。
フランスはこれまで、ヨーロッパで最も出生率が高いことで知られてきました。1994年に合計特殊出生率(一人の女性が一生のうちに出産する子供の数を示す割合)が1.65まで落ち込んだフランスは、2010年には2.03まで持ち直したことで、世界の注目を集めました。その要因とされていたのが、「政府の手厚い少子化対策」です。
例えば、「第3子を生んだ世帯に対する家族手当・所得税減税」「高校までの授業料無料」「返済不要の奨学金制度」「妊娠後の産科の受診料や検診費、出産費用などを無償化」「育児休業に伴う所得減少の補填(就労選択自由補償)」などを実施。また2016年からは、家族政策を担う「家族・児童・女性の権利省(家族省)」を立ち上げました(それまでの特命担当大臣を省に格上げする形)。
しかし、これだけ充実した社会保障政策にもかかわらず、2010年をピークに出生率は減少し続けており、24年には1.62にまで低下しています。
またフランスに追随するように、欧州各国も似たような少子化対策を進めてきましたが、いずれも低迷しています。
例えばスウェーデンは、夫婦1組につき給与の80%が支払われる480日の育児休暇や、第1子出産後30カ月以内に第2子が生まれた場合の「特別育児休業給付金」の支給、フレックスタイム勤務の導入など、さまざまな手を講じてきました。結果、出生率は21年に1.67まで上昇しましたが、24年には1.43まで落ち込んでいます。
イタリアでも、18歳の子供一人につき月額最大189ユーロ(約3万円)の手当や、1000ユーロ(約17万円)の出産手当を導入するなどしてきました。しかし、24年の出生率は1.18と、過去最低を更新。ハンガリーも手厚い支援を行ってきましたが、21年の1.6をピークに低下しており、24年の出生率は1.38にとどまっています。
いずれの場合も一時的には効果が見られるものの、長続きせず、根本的な解決には至っていないのが現状です。
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