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トランプ米政権の発足以降、米民主党の支持率が著しく低下し、党の方向性が迷走しています。

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米リベラルメディアのNBCが3月に行った世論調査によると、民主党を「好意的に見ている」との回答が27%と、1990年以降の調査で過去最低を記録しました。「非常に好意的」との回答はわずか7%でした。

また、リベラルメディアのCNNが同月に実施した世論調査でも、民主党に「好意的」との回答は29%で、同じく過去最低を叩き出しました。民主党員・民主党寄りの無党派層の中で見ても、「好意的」との回答は63%であり、バイデン前政権発足時(2021年)の81%から大きく低下しています。

支持率低下の要因として両メディアが挙げているのが、「上院民主党トップのチャック・シューマー氏が、共和党の作成した予算案の賛成に回った」ことです。政府閉鎖の回避に動いたシューマー氏に対し、民主党議員から辞任要求が起き、支持者からも「トランプ氏に降伏した」とみなされ、批判の声が殺到していました。確かに上記の世論調査でも、多くの民主党員が「トランプ氏に妥協するのではなく、たとえ行き詰っても党の立場を堅持してほしい」「共和党の政策を阻止することに注力すべき」と考えていることが分かっています。

しかしもう一つの要因として、「バイデン政権以降のリベラル化に対する反動」があるとみられ、こちらの方が深刻です。米調査会社ギャラップが2月に公表した調査では、民主党員と民主党寄りの無党派層の中で、「民主党はより穏健であるべきだ」との回答が2021年時より11%増え、45%に上りました。

一方で、「よりリベラル」にすべき(つまり、より左翼化すべき)の回答が29%であり、「現状維持」は22%でした。前出の穏健であるべきとの見方は、「すでに民主党は左傾化し過ぎている」との考えに基づくのに対し、現状維持派は「今の左傾化路線を肯定している」と解釈することもできます。そのため、「よりリベラルにすべき」と「現状維持派」を足し合わせると、穏健派の勢力と拮抗しており、党が完全に割れているのが分かります。

当然、党の方向性を決めるトップの人選も一致していません。前出のCNNの「民主党の中核的価値観を最もよく反映していると思う指導者は誰か」との質問に対し、民主党員の30%以上が無回答だった一方で、10%がアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(ニューヨーク州選出)、9%がカマラ・ハリス元副大統領、8%がバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)と、「急進左派」と位置付けられる議員の名が続いています。

つまり、穏健派の声を代表とするリーダーが民主党には見当たらず、代わりに左翼議員の存在感が目立っていることが伺えます。

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