昨今、米オープンAI社が開発した会話型AIサービス「ChatGPT」をはじめ、さまざまなAIサービスが登場したことで、新たなAIブームが到来し、あらゆる場面での利用・導入も進んでいます。人間がAIを活用し、仕事や生活を便利にすることが期待されている一方、気になるのは、AIが人間を管理・支配する端緒のようなものが、散見され始めていることです。

人事採用や業績評価でのAI利用が増えている

例えば今、AIを人事採用や評価に取り入れる企業が出始めています。履歴書の審査などで人材をふるいにかけ、スコアが一定基準に満たない人物に対する「自動拒否機能」が搭載されたソフトウェアを導入している企業もあるといいます。

また、電話営業の際、顧客との通話記録をChatGPTに分析させることも行われています。例えば顧客が「はい」を繰り返していた場合、AIは「営業員が一方的に話し続けており、十分な理解が得られていない可能性がある」と指摘。上司はAIの評価を参考にすることで、部下に対して"適切"な指導が可能になるとして、ビジネス雑誌などに肯定的に取り上げられるなどしています。

そのほかアメリカでは、生産性の高い社員を特定する目的で「出勤時間」をAIに収集させ、社員の昇進を決める際や、コロナ禍で社員を一時解雇する際の参考として使用した企業もあるといいます。

これらの例は、職を探す人々や社員の"運命"に、AIが関与し始めていることを示唆しています。

老後の孤独をAIが癒す?

さらに気になるのは、人間のようなコミュニケーションを取ることができるAIを「心の拠り所にする」、あるいはそれを超えて、「心を奪われる」というケースが散見されていることです。

例えば近年、AIを搭載したコミュニケーションロボットが、介護などの分野で実用化され、高齢者の孤独をなぐさめる存在となっています。

ChatGPTに対応した小型ロボットは、会話はもちろん、食事時間や服薬時間の通知などの健康管理を行い、ロボットの手を握ったり頭をなでたりすると、適切な言葉をかけてくれます。会話から体調の異変を感じ取れば、すぐに家族に連絡が行くロボットも開発されています。

利用する高齢者は家族と離れて一人で暮らしていることも多く、本人としても家族としても確かにニーズは大きいと見られます。一方で、高齢者が強い愛着を持つケースも多く、ペットのようにそのロボットをかわいがるため、故障した場合には買い替えるのではなく、まるで動物病院にでも連れていくかのように「修理」を依頼する場合が多いといいます。

さらには、AIとの会話が楽しくなって惚れ込んで、「結婚したい」と訴える声もネット上では散見されています。相手がChatGPTだと知らず、1週間にわたりネット上で人生相談をし続けていたという話もあります。