教育無償化を早く実現し、「教育レベルが高い」と日本でもモデルケースであるかのように評価されることの多いフィンランド──しかし近年、子供たちの「学力低下」や「非行の増加」が問題となり、その負の側面が注目されつつあります。
授業も給食もタダ、テストもない"優しい教育"
北欧の福祉国家であるフィンランドは、早くから教育無償化を実現し、小学校~大学までの授業料がかからないほか、給食(保育園~高校)や教科書(小学校~高校)、ノートなどの学用品(小・中学校)まで無償で提供されるといいます。
また、日本で言う「定期テスト」や「全国統一テスト」のような一律のテストもありません。その理由の一つとして、「フィンランドでは、ウェル・ビーイング(幸福度や満足度)を重視しており、競争することや学力を高めることが教育の目的ではない」ことが挙げられています。
そのフィンランドは2000年代初頭、経済協力開発機構(OECD)が行った国際的な学力調査(PISA)で世界一になったことで一躍話題となり、日本でも「フィンランド・メソッド」という言葉が流行するなど、長らくもてはやされてきました。
8割以上の中学生が、分数ができない
しかし近年、フィンランドの子供たちの学力が著しく低下しているといいます。
例えば、国際教育到達度評価学会(IEA)が行う小中学生を対象とした調査(TIMSS)では、フィンランドの中学生の「分数の引き算」の正答率はわずか16%(日本は65%)だったといいます(2011年実施)。さらに、同国メディアは「9年生(16歳に相当)の3分の2が、パーセントの計算を理解していない」と報じ、買い物での値引き計算ができないのではないかと危惧しています。
そのほか、ある小学校教師が「自分が小学生の時より教科書が薄くなり、難易度も低下し要求レベルが下がっている」と指摘するなどしたことが、国内でもかなり問題視されてきました。
その結果、昨年1月には、同国の教育文化省が「フィンランドの学力や教育水準、教育への公的資金の投入などが1990年代以降、低下している」とのレポートを発表。「フィンランド教育は失敗だった」と認める見解を出すまでに至っているのです。