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アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

中国で再び、新型コロナが流行し始めているが、当局からはそれを明るみにしたくない意図が透ける。

11月30日、北京市の疾病予防管理センター(CDC)はウェブサイトで「感染症発生週報」を発表した(*1)。それによると11月20日から26日の間に北京で発生した感染症患者は7万2000人を超え、前の週と比べ2倍に急増している。ただし、この数字は過少報告されている可能性が高い。

問題は、その感染症の正体が何か、である。

新型コロナについて口をつぐむ官営メディア

現在、北京市での感染症のトップ3はインフルエンザ、アデノウイルス、RSウイルスだとされている。また12月2日、中国CDCの免疫計画主席専門家である王華慶は記者会見で、「モニタリングの結果によると、15~59歳ではインフルエンザ、ライノウイルス、新冠病毒が優勢である」と述べた。

しかし実は、上海空港が旅行者のPCR 検査を開始している。そして、あまり評判の良くないあの「大白」(防疫工作員)が再登場し、各地で健康コード(個人の電子パスとして使用される位置追跡アプリケーション)がオンライン化されている。

また北京市CDCはこのほど、同市で新型コロナが流行していると認めている(*2)。新型コロナの主な流行株は「XBB変異株」だという。

11月10日、ウイルス学の権威、鍾南山も広州会議で「11月から来年1月まで新型コロナがピークに達するだろう」と公言(*1)した。鍾南山は、初めてコロナが登場した際、大活躍した人物だ。

また、多くのネットユーザー達が自主的に検査した結果、コロナ「陽性」と出ている。

一方、中国共産党の官営メディアは新型コロナについてほとんど言及していない。多数の病院も患者の病原体検査を行っているが、そこに新型コロナという項目が存在しないのだ。

(*1) 2023年12月2日付『中国瞭望』
(*2) 2023年11月22日付『北京市人民政府』