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イギリス・ロンドンのサディク・カーン市長は、2025年までに導入する予定だった新たなガソリン車規制について、事実上、断念したことを認めました。

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ロンドン市内は8月末に、全域がULEZ(超低排出ゾーン)と呼ばれる排気ガス規制区域に指定されました。排気ガスの基準を満たさない車に一日当たり12.5ポンド(約2300円)の通行料を課すもので、新たに指定された地域を走っている車のうち、1割ほどが不適合になるとみられています。

ULEZは2015年に当時市長だったジョンソン元首相が導入。カーン市長が引き継ぎ、19年にロンドン中心部に導入され、その後も範囲を拡大してきました。カーン市長は、大気汚染による疾病の抑制と気候変動への対処のために必要であると訴えてきました。

しかし、イギリスの消費者物価指数は7月、前年比で6.8%前後と、深刻な物価高が続いています。ULEZによる通行料負担が消費者や事業者に与える影響は大きいとして、ロンドン市内の5つの自治体は拡大差し止めを求める訴訟を起こしています(その後、棄却)。また、ULEZのために設置された監視カメラは少なくとも200台が破壊されるなど、混乱が生じています(8月30日付英イブニング・スタンダード紙電子版)。

7月にロンドン西部で行われた下院議員補欠選挙では、カーン市長の所属する労働党が負け、ULEZ拡大に反対していた保守党候補者が勝利しました。労働党のスターマー党首は「ULEZが敗因だったのは間違いないと思う」と説明しています。

カーン市長はULEZに加え、2025年までにすべてのガソリン車やディーゼル車に通行料金を課す「ゼロエミッションゾーン(ZEZ)」の導入を推進してきました。走行距離に応じて課金され、「車両の排ガス量」や「渋滞の程度」、「公共交通機関のアクセス」に応じて異なる料金をドライバーに課す計画でした。

しかしULEZで猛反発を受けたことを受け、この新たな計画についてカーン市長が「今やゴミ箱行きになった」と述べたことを8月29日付米ウォール・ストリート・ジャーナル紙電子版が伝えています。

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