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2023年8月11日(金・祝日) 公開

《本記事のポイント》

  • 生還者の実話に基づいた大作
  • 「賭けボクシング」という拷問
  • 我々はまだ選ぶことができる

絶滅収容所、そして強制労働収容所から生還した者による「知られざる実話」がまだあった。

8月11日から公開される映画「アウシュヴィッツの生還者」は、収容所を生き抜いた主人公ハリー・ハフト(ベン・フォスター)の物語だ。「レインマン」などの作品を手掛けたバリー・レヴィンソン監督がユダヤ人ハリー・ハフトの壮絶な生き方を描いた大作である。

物語は、ハリーの息子が父の半生を描き上げた実話をもとにしている。

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これまでも収容所の物語は数多く語られてきた。だが、そのどれ一つとして同じではない。そして、そのどれもが見聞きする者に強烈な印象を残してやまない。

この物語の主人公のハリーは、彼と同じく強制収容所送りとなり、生き別れになった恋人レアとの再会を求めて、苛酷な強制収容所で生き抜くことを決意。生き残った彼はアメリカに亡命した。

「自分が生き延びたのは、ナチスが主催する賭けボクシングで、同胞のユダヤ人と闘って勝ち続けたからだ」

あるスポーツ・ジャーナリストとの取材でこう告白し、ハリーは一躍時の人になった。

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「賭けボクシング」は将校たちの暇つぶしだった。

親衛隊の中尉に、その腕を認められたハリーは、対戦相手のユダヤ人を次々と倒していく。負けた囚人は、その場で射殺された。

ハリーの物語は新聞で大きく取り上げられ、それがきっかけとなって彼は有名ボクサーとの対戦というひのき舞台が与えられる。対戦が報道されれば、生き別れになったレアと再会できるかもしれない。そんな期待を胸に抱いて、対戦に臨むハリーに待ち受けていたものとは――。

「賭けボクシング」という拷問

最終的に敗者が射殺されるボクシングに歓声を上げるナチスの将校たち。

剣闘士奴隷やキリスト教徒を動物と闘わせて残虐な快楽に酔いしれたローマ時代を彷彿とさせる。

彼らにとっては「暇つぶし」だったが、ボクシングは罪深い「拷問」であった。

親衛隊の中尉がハリーの生き残りたいという願いを利用し、ハリーは同胞のユダヤ人の殺人に手を貸すことになる。次第に彼は中尉の「ペット」と化し、そのことでアメリカに移民後も責苦に苛まれていく。「賭けボクシング」は、ハリーの魂に深い爪痕を残したのだ。

「僕は、選ぶこともできた」

これは映画のワンシーンでハリーが語るセリフ。自らの罪に対する悔恨の深さを表す言葉だ。

ハリーをはじめ、当時のユダヤ人が経験したであろう苦しみに思いを馳せ、それを公平にジャッジすることは簡単なことではない。

想像を絶する悲惨な体験の中で、兄以外の全てを失ったハリー。そんな彼は「神が沈黙していること」に苦しみ続けた。彼に真の許しと心の平安が訪れる日はくるのか――。

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我々はまだ選ぶことができる

確かに、ハリー個人の道徳的かつ宗教的責任が問われる日もくるだろう。

だがそれとは別に、未来から遡って現在の我々が置かれた地点を見つめた時、「僕は、選ぶこともできた」と、同じような悔恨に苛まれる可能性はないのだろうか。

全体主義の問題に取り組んだ哲学者のカール・ヤスパースは、著書『われわれの戦争責任について』の中で、西側が全体主義国家の台頭を傍観し、対岸の火事に我関せずとばかりに加担した罪を問うている。

この巨悪に目を瞑り放置することは法律的には罪ではない。しかし、道徳的次元および宗教的次元においては、大きな罪となるのである。

しかも、この全体主義の悪をくいとめられるのは、人々が討論によって自由な世界を創設することができる、公的領域が存在している間のみである。

強制収容所がつくりだす悲劇。それを描く映画は常に「手遅れになる前に、我々にできることは何か」を問うてくれる。

どのような小さなことであってもいい。中国や北朝鮮等の全体主義体制下で抑圧される人々に慈悲の思いを持ち、何らかの形で連帯すること。それが決して神が沈黙していないことを示す力になるはずだ。

 

『アウシュヴィッツの生還者』

【公開日】
2023年8月11日(金・祝) 新宿武蔵野館ほか公開
【スタッフ】
監督:バリー・レヴィンソン( 『 レインマン 』『 グッドモーニング,ベトナム 』)
【キャスト】
出演:ベン・フォスター ヴィッキー・クリープス ビリー・マグヌッセン ピーター・サースガード ダル・ズーゾフスキー ジョン・レグイザモ ダニー・デヴィート
【配給等】
配給:キノフィルムズ
2021/カナダ・ハンガリー・アメリカ/英語・ドイツ語・イディッシュ語/129分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:THE SURVIVOR/字幕翻訳:大西公子/映倫区分:G 提供:木下グループ

 

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公式サイト https://sv-movie.jp/

 

【関連書籍】

いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版

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