2023年7月号記事
ニッポンの新常識
軍事学入門 36
中国がウクライナ戦争から得た教訓
世界の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」をお届けする。
台湾国防安全研究院
国家安全研究所所長
国家安全研究所所長
沈 明室
(シェン・ミンシー)台湾国防大学で政治学博士号を取得し、2021年より現職。淡江大学国際事務與戦略研究所准教授も兼任する。元台湾国防大学戦略研究所所長。人民解放軍の研究などを行う。
ウクライナ戦争が1年以上経つ今、中国がこの戦争から得た教訓はいくつかあり、間違いなく台湾侵攻に活かすでしょう。
まず習近平指導部は、台湾を数日で制圧できなかった場合の「長期戦」への備えの必要性を強く感じました。武器・弾薬の備蓄を強化するだけではなく、昨年の党大会では「国防動員と予備役部隊の建設を強める」と打ち出し、有事下の動員と予備役の充実も図っています。国内外の中国人などを総動員する「国防動員法」があるものの、実際に運用する能力はありませんでした。そのため、党大会終了後に国防動員弁公室を地方政府に設置し、動員力を高めています。