あまりの儲けぶりに、「守銭奴」「強欲」などという心ない批判に絶えずさらされ続けた、石油王のロックフェラー(1839~1937年)。

だが、その本質を表すエピソードについては、本誌2023年5月号「ロックフェラーの改心」や本欄「石油王ロックフェラーのアナザーストーリー〈前編〉」で伝えた。

今回は、さらにもう一歩踏み込んで、大富豪ロックフェラーを支えた、聖書の言葉や信仰に関するエピソードについて見ていきたい。

「信仰こそが成功の母だと信じている」

ロックフェラーが息子に送った手紙には、実体験に裏付けられた成功哲学が、確信に満ちた言葉で綴られている。

ロックフェラーは、子供の頃に初めて稼いだ1.5ドルのお金の10分の1を教会に献金して以来、収入の10分の1を献金し続けた。慈善事業に目覚める以前から、獲得した富を熱心に神に捧げる信仰者だった。

そうした人物像を念頭に置くと、その手紙で注目を要するのは、信仰と成功の関係を語ったくだりだ。

「私は、失敗が成功の母だとは決して信じなかった。私は、信仰こそが成功の母だと信じている。勝利は癖となる。敗北もまた癖となる。もし、あなたが成功したいのならば、勝ち続けなければならない。私は、ある程度の勝利でよいとは思わない。私が望むのは成功を持続することだ。これのみが私を強者にする方法だ。信じるということが、私を成功に向けて突き動かしているのだ」

"I never believed that failure is the mother of success, I believe that faith is the mother of success. Victory is a habit, and failure is also a habit. If you want to succeed, you must achieve sustained victory. I do not like to achieve a certain amount of victory. What I want is sustained victory. Only in this way I become a strong one. Confidence motivates me to succeed."

(※以下、英文の出典は"The 38 Letters from J.D. Rockefeller to his son" G.ng/M.tan編)

ロックフェラーは、さまざまな手紙の中で、失敗から教訓を学ぶことの大切さを語っているので、もちろん上の言葉は、そうした反省や創意工夫を否定しているわけではない。

手紙で注意を促しているのは、「勝ち続ける」ことこそが成功の道であり、それを維持する原動力は「信仰」にあるということだ。

「不動の信仰は山々をも動かす、という言葉を本当に信じられるか」

ロックフェラーは生涯を通してお金を稼ぎ、神に捧げようとしたが、一度限りの勝利や、一時期の勝利であっては、その使命は果たせない。だからこそ、勝ち続けない限り成功とは言えない、そう考えたのだろう。

手紙では、聖書の「不動の信仰は山々をも動かす」("Unshakable faith is enough to move mountains.")という言葉を、本当に信じられるか、と問いかけている。ロックフェラーは、多くの人々のように、この聖句を「不可能だ」「馬鹿げた考えだ」と見なしてはいけないという。

(この言葉への)「信頼から、『私にはできる』と信じる姿勢が生まれる。そして、「『私にはできる』と信じる姿勢から、能力や技術、エネルギーが生まれる」

"Confidence produces the attitude of believing in "I can do it", and the attitude of believing in "I can do it" can produce the abilities, skills, and energy."

「あなたが『私にはできる』と信じる時はいつでも、おのずから、問題を解決するための方法が心に浮かび上がる。そして、問題をうまく解決する時に成功が生まれる。これが、信頼が、その力を示す過程なのだ」

"Whenever you believe that "I can do it", you will naturally come up with a "how to solve" method, and success is born once you successfully solve problem. This is the process of confidence displaying its might."

ロックフェラーは、信仰には山をも動かす力があると信じ、心に灯りをともすことが成功の原点だと捉えた。

「いつか必ず金持ちになってみせます。絶対なってみせます。絶対です」

実際に、貧しい頃から「大富豪になれる」と信じており、その思いが溢れ出した時のエピソードが、いくつか残っている。

10代の頃、ニューヨーク州で友人とサスケハナ川の岸を歩いていた時、ロックフェラーは、「大きくなったら、いつか、10万ドルの財産がある男になりたいなあ。うん、いつかなってみせるよ」と語っていたという(ロン・チャーナウ著『タイタン(上)』)。

また、初めて就職し、クリーブラントの農産物仲買商で会計係をしていた頃、ロックフェラーは年上の実業家と話していた時に、気持ちが高ぶり、「いつか必ず金持ちになってみせます。絶対なってみせます。絶対です」という言葉が口をついて出てしまった。そして、そう言いながら、念を押すかのように、相手の膝を何度も叩いた(前掲書)。

ロックフェラーは冷静沈着で礼儀正しい若者だったので、このような行動に出ることは稀だった。そこには若気の至りも含まれていたのかもしれないが、この時は、強く心の内で思っていることは隠せなかったのだろう。

「どれだけ信じられるかが、どれだけ成し遂げられるかを決めるのだ」

「どれだけ信じられるかが、どれだけ成し遂げられるかを決めるのだ」

"The level of confidence determines the level of achievement."

伝記作者のロン・チャーナウは、ロックフェラーが10代の時から慈善のための寄付に喜びを感じていたのは明らかだという。

「自分の人生の、いわば財務計画ができたときのことはよく覚えている。オハイオにいたときに年配の牧師様の説教を聞いたことがあった。その牧師様はこう言われた。『金を稼ぎなさい。正直に働いて稼ぎ、賢く与えなさい』。私はその言葉を小さなノートに書きとめた」(前掲書)。

ロックフェラーは、その後、信仰を原動力にして道を開き、困難の山々を動かして、世界一の大富豪となった。

その前人未踏の大事業を支えたものは、神への信仰であり、"I can do it."という自己信頼であった。(了)

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