2023年5月号記事

中国調達から今すぐ逃げて!

日本の工場が人質になる時

中国のリスクや悪事をこれ以上見て見ぬふりをし、ゴマカシながらビジネスをしていくことは、もはや難しくなりつつある。

世界の企業が、中国から脱出し始めている。

アップルやナイキといった名だたる企業、それも「中国生産の象徴」のように言われていた企業が続々と、工場を外に移していると報じられる。

米大手調査会社ガートナーによれば、サプライチェーンを中国に抱える企業の95%が、生産拠点や部品調達先の脱中国を検討し、うち約5割がすでに実行に移していると答えた。

中国人までもが「脱中国」

さらには中国人の企業家たちまでもが、あまりに統制的な政府に失望・恐怖を感じ、海外に脱出する動きが加速している。これは「潤学(脱出法を学ぶ)」とも呼ばれ、中国における流行語になっている。現地の移民コンサルタントへの問い合わせは10倍増、とも報じられている。

この波は一部、日本にも及ぶ。海外に拠点や調達先を持つ企業の5社のうち2社が、その移転・変更を検討・実施していると、帝国データバンクが年初に発表した。進出先・調達先の筆頭は中国なので、大半が「脱中国」の動きと見ていいだろう。

だが、いまだに6割近い日本企業が"足抜け"を判断できないでいる。「そうはいっても中国は人件費が安い」「日本に回帰しても人手不足」「中国でないと手に入らない部品がある」など、事情はさまざまだ。多くの企業にとって、中国との関係は長年築いた"資産"であり"競争力の源泉"であったかもしれない。「そう簡単に脱中国などと言わないでくれ」と反発する声もある。

しかし今や日本企業が直面する「チャイナリスク」というのは、「円安によるコスト高」や「コロナなどによる一時的な供給網の混乱」といった次元を、遥かに超えつつある。

脱中国が報じられている主要な企業

日本

ソニー、青山商事、ダイキン工業、日立、キヤノンスズキ、アイリスオーヤマ、ワールド、任天堂、マツダ、ホンダ、キリン

アメリカ

アップル、ナイキ、デル、HP、インテル、GAP

ドイツ

アディダス、PUMA

韓国

サムスン

 

次ページからのポイント

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