熊本市は13日、「市民」の定義に外国人も明記する自治基本条例改正案について、2月開催の市議会への提出を見送る方針を明らかにした。4月1日の施行を目指していたが、市民の反対意見が多数寄せられたため、内容を再検討するとしている。

現在、熊本市の条例では、「住民」を「市内に本市の区域内に居住地その他生活の本拠を有している個人」とし、「市民」は、住民に加え、市内への通勤・通学者、市内の事業者・地域団体・市民活動団体と定義している。

検討されていた改正案には、「市民」の定義に該当すれば、外国籍の人も市民に含むと明記されている。自治会長などでつくる自治推進委員会で「外国人も街づくりに参加してほしい」という意見があったことを受けて、素案に盛り込まれたもので、成立すれば政令都市では初めて自治基本条例に明記されることになる。

改正案は2022年12月に公表され、1月18日までの一カ月間、市民などの意見が公募されていた。その中で「外国人に参政権を与えることになる」など反対の意見が数多く寄せられたため、熊本市は1月5日、「公職選挙法既定の選挙権を認めるものではなく、住民投票の請求権を求めるものでもない」と声明を出していた。

「悪用されれば内政干渉や安全保障上の問題にもつながりかねない」

こうした中、幸福実現党熊本県本部の磯崎幹太代表は1月16日に熊本市役所を訪れ、大西一史市長宛てに「熊本市自治基本条例改正の見直しを求める要望書」を提出していた。要望書では、「市は『選挙権や住民投票の権利を認めるものではない』としていますが、こうした条文は将来的な外国人選挙権付与への大きな後押しとなりえます」と訴えた。

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熊本市市役所で要望書を提出した、磯崎幹太代表(写真右)。

さらに、選挙権付与の問題だけでなく、「外国人に市政への積極的な関与を促すこと自体が、大きな問題を孕(はら)んでいる」と指摘。改正案では、外国人が市長や市議会に対して情報開示を求める権利が与えられることや、市の総合計画の策定に外国人の直接的な関与が可能となること、審議会等の委員に積極的に外国人を選任できるようになるものであることを挙げ、「外国勢力に悪用されれば、内政干渉や安全保障上の問題にもつながりかねません」などとした。

外国人の意見を取り入れるためには、「市民と定義しなくても、別途の意見交換会を設ければ、彼らの意見を聞くことは十分にできます」と提案。政令指定都市が条例改正に踏み込めば、全国的にも同様の条例改正が波及するといった悪影響が及ぶことを危惧した。

安全保障上の危機を避ける知恵を介在させるべき

多くの地方自治体では外国籍の住民を「外国人住民」「外国籍住民」と位置づけ、意見を聞く機会を設ける、相談窓口を設置するなどの対応を行っている。外国人居住者が増える中では、街づくりに新たな課題が生まれ、相互のコミュニケーションを持つ機会が必要とされているのは確かだろう。

ただ、そもそもの出発点にあった「街づくりへの参加」のためには、条例が改正された場合に外国人に「市民」として与えられる権利が必須とは言えないだろう。万一、特定の国から大人数が大挙して移住してきた場合は、自治体の「乗っ取り」も可能になってしまう。

現実に、中国は留学生を相当程度自由に動員、移動等をさせることができると言われており、これは決して杞憂ではない。

「権利拡大」がなし崩し的に広がり、安全保障上の危機を呼び込まないよう、知恵を介在させる必要がある。

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