2022年11月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第117回
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
台湾危機に備え「脱中国」に本腰を入れよ
日中国交正常化から50周年を迎える中、両国の経済関係が、重大なターニングポイントにさしかかっています。日本企業による「脱中国」の動きが、加速しているのです。
自動車メーカーのホンダはこれまで、「国内外の生産拠点で、中国から調達する部品が入っていないケースはほぼない」(*1)と言われるほど、中国を部品供給の要としてきました。ところがこのほど、供給網を「中国」と「その他地域」で切り離すことを決断しました。
マツダも、「コストの低い地域に部品の生産を依存するというやり方から脱却したい」(*2)として、中国から日本国内に生産をシフトする意向を示します。
生活用品メーカーのアイリスオーヤマも、円安の影響による輸送コストの増大を理由に、50種類の生産を国内にある3つの工場に移す準備を始めています。
全体を見ても、2020年以降2300社近い日本企業が中国から撤退し、進出数は過去10年で最も少ない状況です(*3)。
(*1)8月25日付産経新聞が報じた関係者のコメント。
(*2)8月25日付朝日新聞が報じた同社幹部のコメント。
(*3)帝国データバンク
チャイナリスクを国内回帰のチャンスに
こうした動きが加速した要因の一つは習近平政権の「ゼロコロナ政策」です。特に上海における長期の都市封鎖で、ほとんどの日系企業は工場を止めざるを得ず、大きなダメージを受けました。
経営にこれほど影響を与える政策が、強権の下で、いとも簡単に実行される実態を目の当たりにし、共産主義国でビジネスをする怖さを、多くの企業が身に染みて実感したのです。
コロナ政策以外にも、「チャイナリスク」を危惧させる要因は数多くあります。
昨年9月には、中国の「国家安全」を損ねるような形でデータ収集、移転などを行うと罰則を科される「データ安全法」が施行されました。日本企業が思わぬ形で「違法」扱いされ、罰金や営業停止を科されるリスクがあります。
また中国は、「ハイテク関連製品の開発や設計など全工程を国内で行う」ことを強制する規制導入を検討しています。「中国で製品の組み立てをするなら、その開発研究拠点も中国に移せ」と言わんばかりの内容で、「技術移転が狙いでは」との観測もあります。
これらは企業にとって大きなリスクですが、国家にとってもリスクです。日中が対立した際や有事の際に、中国に進出した日本の企業や従業員が人質となって"制裁"されかねない状況は、経済安全保障の観点からも問題です。
台湾有事の可能性も、企業の脱中国をさらに後押ししています。10月の党大会で習近平氏が異例の3期目続投を決めた場合、いっそう政治的野心を膨らませ、いよいよ台湾の武力統一に踏み込むとの観測もあります。そうなれば、日本は米台側に回り、中国と敵対関係になります。中国の日本企業やその社員は、人質になったも同然です。台湾有事は「あるか、ないか」ではなく、「いつあるのか」と考えるべきです。日本企業が脱中国に動くのは、喫緊の課題なのです。
そして重要なのは、脱中国後の生産拠点の行く先です。撤退後、生産コストの安い東南アジアなどに移行するケースももちろんありますが、日本にとってはこれを機に、企業の「国内回帰」を促したいところです。
アメリカでは、トランプ政権時に企業の国内回帰を促しましたが、コロナ禍なども後押しし、国内回帰や直接投資によって生まれた投資は2019年以降、右肩上がりになり、22年には約35万人の雇用が生まれる見通し、との分析もあります。
日本も、特に付加価値の高い製品の生産を国内に移転すれば、産業基盤が強化されます。企業が地方で工場を建設し、社員を採用し、社員が生活すれば、立派な経済圏が誕生します。
電力不足は大きなボトルネック
しかしそこには、大きなボトルネックがあります。最大のものの一つは、アジアの諸外国に比べて、日本の電気料金が高いということです。この観点からも我が国は、非効率な太陽光発電の推進をやめ、安全基準を満たした原発をいち早く再稼働させていくことが必要です。
国内回帰をする企業の法人税を安くするという手もあります。他にも考え得るあらゆる対策を打って、このチャンスを生かすべきではないでしょうか。