2022年10月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第116回

釈党首

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

税金は民の血、グリーン名目の増税来るか

「政府の借金」が過去最大を更新したとの発表がされるなか、政府はさらに大きな支出をしようと前のめりです。

7月下旬、「GX実行会議」の初会合が開かれました。GXとは、グリーントランスフォーメーションの略称で、2050年までの脱炭素、カーボンニュートラルの実現に向け、日本の経済社会、産業構造を根本から作り変えることを目指す政府の成長戦略のことです。

GX国債は増税を招き経済を衰退させる

岸田文雄首相はGXを「新しい資本主義」の目玉政策と位置付け、今後10年間で官民合わせて150兆円規模の投資を行うとしています。まずは政府が20兆円の資金を投じ、巨額の民間投資を引き出す呼び水とするために、「GX経済移行債」(GX国債)を発行するという計画が持ち上がっています。

しかし、この「GX国債」が国民への増税となって跳ね返ってくることは、ほぼ間違いがないでしょう。

このGX実行会議メンバーに伊藤元重・東京大学名誉教授が名を連ねています。伊藤氏は、今までも増税を推進する理論を構築してきた学者で、20兆円の財源の有力な候補として、「二酸化炭素を排出する化石燃料や電気などの使用量に応じて税金を課す炭素税の税収が考えられる」として、増税しても政府が上手に使えば経済発展すると語り、増税路線へ道を拓かんとしています(*)。

脱炭素が本当に経済成長につながるなら、政府支出などなくても民間はどんどん投資するはずですが、実際は成長どころか、企業に多大な負担となります。その結果、「思ったように脱炭素が進まない」として、GX国債が追加発行され、政府債務がさらに膨らむこともあり得ます。

さらにGX国債を返すため化石燃料への課税を強化すれば、電気料金の高騰はもちろん、基幹産業の自動車、石油化学、鉄鋼、セメントなど製造業のコストを押し上げます。製造業ばかりではありません。野菜や果樹栽培などの農業、さらに漁業も石油に依存しています。経済成長どころか、食料供給の首を締めかねません。

(*)2022年5月29日付産経新聞、7月31日付同紙など。

壮大な無駄を生み中国を富ませる脱炭素

そもそも、脱炭素政策自体は壮大な無駄です。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏はCO2を1%減らすのに必要なコストは1兆円と試算しています。

しかも、CO2が温暖化の原因という説に異を唱える科学者も多く、地球の温度は雲の量や太陽活動の変化などによって決まるといいます。科学的な根拠の薄いCO2削減のために巨額の投資をしても無駄に終わるのです。

さらに注意すべきは、脱炭素実現に向けて巨額の投資をしたら、その大半が中国に流出する恐れが高いということです。

太陽光パネルに使われるシリコンの8割は中国製で、その半分が強制労働などの人権弾圧が取り沙汰されている新疆ウイグル自治区産です。

また、自動車分野の脱炭素化として電気自動車へのシフトを進めようとしていますが、世界全体の電気自動車に使われている蓄電池の約半分が中国製です。中国は電池生産に必要な鉱物資源の生産地も押さえており、GXを進めるなら中国製品の輸入も進むことになります。増税までして巨額の投資をしても、「中国を富ませるだけ」に終わるでしょう。

なお脱炭素エネルギーのうち、「原子力」だけはサプライチェーンのほとんどが日本国内にあり、原発再稼働によって国内の産業にお金が回り始めます。これを厳しい規制で阻んでおきながら、国益に反する再エネや電気自動車に投資することは得策とは言えません。

富を生み出す民間の自由を守れ

GXのような政府主導の経済施策は、成長につながらないどころか、かえってダメージが大きいと言えます。

岸田首相は「グリーン」と「デジタル」で成長を目指そうとしているようですが、特定の産業分野や技術を優遇しているだけで、新たな付加価値を生んではいません。しかもグリーン名目で増税まで視野に入れつつ、政府の力で急速に産業構造を変えるのは、国の都合を民間に押し付けて自由を奪う、全体主義的な政策とも言えます。

厳しい時代のなかにあっても、人に頼らず一歩を進めようという自立する精神、社会のため、国家のために新しい価値を生み出そうという精神、これこそが資本主義の根幹です。経済学者がいかなる経済理論で数値を弾き出しても、世のため人のために尽くそうとする精神を政府が傷つけるなら、経済は衰退に向かうでしょう。

また、税金は「民の血」であることも忘れてはなりません。炭素税の強化はコロナ禍で瀕死の民間に重くのしかかります。

富を生み出せるのは政府ではなく、民間であり、国民一人ひとりです。日本人の可能性を信じ、自由な経済環境を守る施策こそ、今、求められているのではないでしょうか。