《本記事のポイント》

  • 虚偽の主張「失業率は過去最も早いスピードで低下した」
  • 虚偽の主張「2021年1月の就任時、景気回復は行き詰まっていた」
  • 否定的綱領で国民の憎しみを煽る全体主義的体質

ジェネット・イエレン財務長官が5月31日(現地時間)にCNNに出演し、「エネルギーと食品価格を引き上げ、サプライチェーンのボトルネック現象を起こす予期せぬ大きな衝撃が経済を襲っている」と語った。そして、「これは私が完全に理解できなかったことだ」と述べ、「インフレの経路について、当時の判断が間違っていたと思う」と謝罪した。

軌を一にしてジョー・バイデン米大統領は、「インフレと戦う私の作戦(Joe Biden: My Plan for Fighting Inflation)」と題して、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙にコラムを寄稿した。

これまで政権は「インフレは存在しない」「一時的なものだ」「金持ちしか傷つけない」との説明に終始してきたが、国民のインフレに対する不満をなだめる必要から、インフレと戦う意志を示さなければいけなくなったということだろう。

だが、一連の二人の発言から共通して浮かび上がってくるのは、「インフレが起きているのは認めるが、それは私たちのせいではない」という言い分だ。

(1) 虚偽の主張「ウクライナ戦争からインフレは深刻化した」

しかし、バイデン氏のコラムには多くの間違いが含まれている。これについて、アメリカ第一主義のプロジェクトのジェームズ・カーター氏とマイケル・フォーケンダー氏が、事実を精査しているので紹介する。

バイデン氏は「ガソリンスタンドでの1ガロンあたりの価格が上昇している。そのほとんどの理由はロシア産の原油、ガス、精製能力が減少したからだ」とコラムで主張するが、ガソリン価格の半分以上の値上がりは、プーチンがウクライナに「侵攻」する以前に起きている。

またアメリカの石油の精製量は2020年と比べると、一日当たり150万バレル低下している。精製能力も100万バレル低下している。これはプーチンとは関係のないことである。

(2) 虚偽の主張「失業率は過去最も早いスピードで低下した」

またバイデン氏は「830万人も雇用が生まれ、政権誕生後失業率は最も早く低下した」と豪語する。しかし、トランプ政権時代の2020年から2021年1月までの1年間だけで、雇用は1250万人創出され、バイデン政権の830万人を上回る。

失業率も2020年4月から2021年1月までに、14.7%から6.4%に減り、バイデン政権の2.6%を超える減り方を示した。

(3) 虚偽の主張:数百万人のアメリカ人はより高い賃金で仕事を得ている

実際はこの12カ月で、実質賃金は2.8%下がった。物価が8.3%上昇し賃金は5.5%しか上昇していないので、実質2.8%の賃下げが起きている。

バイデン氏のインフレによる「税」で、平均的アメリカ人は1350ドル(約14万7千円)も購買力を失っている

(4) 虚偽の主張「2021年1月の就任時、景気回復は行き詰まっていた」

2020年の第4四半期の年率のGDP成長率は4.5%と高いものであった。これに比べて、バイデン大統領の第1四半期の成長率はマイナス1.5%ある。

(5) 虚偽の主張「コロナウィルスが広がる前、低成長・低賃金に陥り、最も富裕な人々にとってのみ有利な経済になっていた」

トランプ政権が始動した2017年1月から、2019年のパンデミックが始まる前の期間、GDP成長率の平均は2.54%だった。

2016年から2019年の間、低所得者の週ごとの賃金は14.6%増加して、富裕層の増加率13.5%を上回った。

2019年の実質家計所得の中央値は史上最高となり、失業率は過去最低となった。貧困率はあらゆる人種で最も低くなり、所得の不平等は縮小した。

(6) 誤解を招く主張「今年の赤字は1.7兆ドルで、過去最高の赤字の下げ幅である」

バイデン政権は、今年の赤字は1兆ドルにとどまるとするが、この数字は、2009年、2010年、2011年、2012年、2020年、そして2021年に次いで7番目に悪い数字である。

バイデン氏は、より大きな赤字を望んでいたが、赤字幅が下がったのは、バイデン氏の社会主義的な法案が議会を通過しなかったからである。

以上が、カーター氏とフォーケンダー両氏による検証内容である。

否定的綱領で国民の憎しみを煽る全体主義的体質

事実に基づいた精査を行うと、バイデン氏のウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムは「大本営発表」にすぎないことが明らかとなる。

インフレが隠れた税金となって14万円もの購買力を失わせていることは知らず存せずで、そのインフレの根本原因となっている石油や天然ガス不足は「ロシアのせい」だとして、「脱炭素」「クリーン・エネルギー」に傾斜するバイデン政権は、自国の石油の生産量を増やそうとしない。

あたかも「ガソリンを使って車を乗り回すな」という政権側の潜在的な願いが実現しつつある状況だ。

またインフレを抑えるためにバイデン政権が使う価格統制も、カーター大統領が採用し失敗に終わったインフレ対策である。生産を減少させ、価格を押し上げただけに終わったのだ。バイデン氏は「インフレによる影響をよく理解している」と述べているが、当時、長いガソリン購入者の長い列が国のいたるところにできていたことを忘れたのか。

またコラムの中でバイデン氏は、IRS(内国歳入庁)の権限を強化して富裕層への徴税能力を高めることで「金持ち」に対する課税を強化すべきと訴える。

まるでロシアがヒトラー台頭時の「ユダヤ人」で、トップ1%の富裕層がスターリンにとっての「クラーク(富農)」に相当するかのような主張が展開されている。

だが当時もユダヤ人がインフレの原因ではなかったし、クラークという存在自体がなかったように、「ロシアのせい」「富裕層のせい」という主張は、裏付けが乏しい。

敵を憎んだり、自分たちより裕福な暮らしをしている人々を羨んだりといった否定的な政治綱領に、民衆が合意しやすいのは悲しいことだが、それはヒトラーやスターリンが頼った手法で、バイデン政権の「全体主義的」体質を物語っている。

大川隆法・幸福の科学総裁が著書『ウクライナ問題を語る世界の7人のリーダー』で述べているように、バイデン大統領の「全体主義的ホロコースト体質」をこそ警戒すべきである。

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