2021年11月号記事

Divine Economics

サプライサイド経済学の父 ラッファー博士

なぜ「健全な貨幣」が重要か?
政府の支配から貨幣を守れ(後編)

Part 16


サプライサイド経済学では、「減税」「自由貿易」とともに、「健全な貨幣」を重視する。
博士の目には、昨今の金融緩和政策はどう映るのか。前編に引き続き、あるべき金融政策について聞いた。

(聞き手 長華子)


トランプ大統領の経済顧問

アーサー・B.ラッファー

(プロフィール)
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。

──博士は前回、米連邦準備制度理事会(FRB)は長期的な通貨を安定させるという任務よりも、他の任務を引き受けていると語っておられました。FRBはなぜ本来の目的から逸脱してしまうのでしょうか。

ラッファー博士(以下、ラ): その理由は「権力」です。政府は管理するのが大好きです。私たちは皆、自分の環境や運命を支配したいと思っていますが、政府も同じです。そうした政府の支配欲を制限するために憲法は存在しています。FRBの権限も制限される必要があるのです。

FRBを改革すべき

FRBがその任務をはるかに超えたことを行うようになり、低い生産性や低成長を生む原因となりつつあります。

FRBが勝者からお金を取り上げて敗者を救う時はいつでも経済の生産性は低くなり、成長率は下がるのです。

──FRBを改革すべきだということですか?

ラ: FRBを完全に改革すべきです。通貨価値を安定させたり、銀行規制を行い銀行の安全性を確保したりするなど、任務を極めて限定的なものにすることです。預金時に国民が知りたいのは、銀行が破綻しないということです(*1)。アメリカでは、銀行の破綻が続いた時期がありました。それから預金を保護するための政府独立機関・連邦預金保険公社がつくられ、その規制プロセスは有意義なものとなっています。しかし現在のFRBは、その任務を超え、どの会社を救うかを決めたり、富の再分配や市場への干渉を行ったりする独立した組織となっている。残念ながら縮小されるべきです。

(*1)銀行の役割については、ラッファー博士の伝記『The Emergence of Arthur Laffer』(2021)や論文「Reinstatement of the Dollar: a Blueprint」(1980)に詳しい。

 

次ページからのポイント

通貨の安定の重要性

政府がお金を増やしてもGDPは増えない

マネタリズムで経済繁栄は起こせない