仕事で成功するにも、プライベートを充実させるにも、不可欠なのが「人脈」だ。自分一人では難しくても、さまざまな人の協力があればできることがたくさんある。口下手でマメでもなく、人間関係を作るのが苦手な人は、どうしたらよいのだろうか。『仕事ができる人の人脈のつくり方』著者の中島一氏に聞いた (2015年5月号記事より再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)。

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誰からでも学び相手の役に立つ姿勢が大切

経営コンサルタント

中島 一


(なかじま・はじめ)1938年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。古河電気工業(株)勤務を経て、ケプナー・トリゴー(日本)株式会社。社長、会長を経て、現在、(株)マネジメント・リサーチ・インスティテュート代表取締役。著書に、『意思決定入門』(日経文庫)、『中国人はいかに思考し、どう動く人たちか。』(河出書房新社)など。

日本人は文化的に、村社会の決まった人間関係の中で生きてきました。人脈は、生まれた途端に与えられるので、努力してつくる必要はなかったのです。

しかし、中国や欧米など、人間関係が流動的で厳しい社会では、生きていくために人脈は不可欠です。「信用して良い人」がいるかどうかは死活問題でした。

最近は、日本も流動的な社会になっています。一生のうちに何度も住む場所が変わるのは当たり前ですし、会社をやめたり、独立して新しい会社をつくることなどもあるでしょう。これから、人脈づくりはより大切になってきます。

まずはどうやって相手の役に立つか考える

そこで、人脈をどう考えるかが重要です。「自分にとって利益があるもの」「便利なもの」として人脈を考えがちですが、本当はそうではありません。

人脈は、まずは自分が相手に得をもたらし、それから返ってくるという関係になっています。

ですから、「人脈がない」と嘆く前に、「どうやって相手の役に立ちたいのか」を考える必要があります。相手が困っていることを解決してあげること、もっと言えば、 自分の価値を磨いて、その価値を提供し合うということです。

数年先や生涯を見すえて人脈をつくる

私は、「短期、中期、長期」の3種類に分けて人脈を形成することをすすめています。

短期人脈とは、今現在、日常の業務を遂行する関係の人脈です。素早く仕事をし、約束を守るなどの信頼を積み重ねることによって築いていけます。

中期人脈は、今はまだ実績がなくても、「数年先には成果を出すはず」という期待で支援したりされたりする関係のことです。中期人脈をつくる鍵はアイデアの提案です。相手に「これまでにない新しい価値を生み出せる」と思ってもらえれば、協力関係を創り出すことができます。この中期人脈づくりは、数年先の仕事の成果をつくることになるので、いつも力を入れることをおすすめします。

そして長期人脈は、生きる目的や精神的価値、宗教的価値でつながる関係です。これは、貸し借りで言えば、一生かかってお返しできるかどうかもわからないような関係です。「自分に返してくれなくていい。志を継いでもらえれば十分」というような気持ちで支援してもらう関係、あるいは一生の友になる関係と言えるでしょう。

自分の力を謙虚に見つめ相手の長所に学ぶ

私は、自分では話下手で要領の悪いタイプだと思っているのですが、出会った人とすぐ仲良くなれることも多いです。それは、いつも心をオープンにしているからだと思います。つまり、「自分はそんなに優れた人間ではない」と謙虚になり、自分が相手のために何ができるかを考えるのです。

こう考えるようになったきっかけは、若いころに会社の人事部にいて、大規模なリストラを実行したことにあります。自分は会社に残ったのですが、「やめた人はどうなるのか」「会社で働くことは、自分にとってどんな価値があるのだろうか」と悩み、結局、会社をやめて訪問販売を始めたのです。

そこで、自分より学歴が低い人がどんどん売っていくのを目の当たりにし、いろいろなコツを教えてもらいました。そうした経験を通して、人との関係がとても大切だと分かったのです。

自分の価値を磨き、それを誰かの役に立てたいと思っている人こそ、より良い人脈をつくっていけるのではないでしょうか。(談)

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2015年5月号 口下手な私のための人脈力

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