2021年12月号記事

岸田首相も枝野代表も

ハイエクの『自由の条件』は
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長らく絶版だった『自由の条件』が復刻し、普及版が出版された。
しかし日本の政局を見ると、左旋回が甚だしい。
政治家は日本の国力を維持し、繁栄させられるのか──。
ハイエクの『自由の条件』から、政治家が持つべき政治哲学とは何かについて考えてみる。

(編集部 長華子)


岸田文雄首相は、「新自由主義からの転換」というスローガンのもと、「成長と分配の好循環」を掲げる。中曽根康弘元首相や小泉純一郎元首相以来、重視されてきた「新自由主義」から転換し、「格差是正」により「新しい日本型の資本主義」を目指すという。

一方、野党の立憲民主党の枝野幸男代表も「分配なくして成長なし」と政策理念を掲げているので、経済観において右も左も実質的な違いはないも同然で、「大きな政府」に向かっている。

岸田氏が否定的に捉える「新自由主義」とは、「小さな政府」を実現し国民の自由を拡大する経済思想である。具体的には民営化や大幅な減税・規制緩和を行い政府の介入を最小限とし、市場の競争原理に委ねるといった手法を重視する。サッチャーやレーガンが新自由主義を政策に取り入れたことから、この新自由主義は経済学の主流派に躍り出た。

というのも戦後先進国で、政府の財政出動を増やせば消費者の消費が増えるとするケインズの有効需要理論を実践した結果、スタグフレーション(*1)を招き、理論の“嘘"が露呈したからだ。

だが、命運が尽きたかに見えた「大きな政府」論がコロナ禍に乗じて復活してきている。それは国の衰亡を招くのみならず、実は深刻な問題を孕んでいる。

(*1)景気が後退していく中で、インフレが同時進行する現象のこと。

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F. A. ハイエク 著 気賀健三・古賀勝次郎 訳『自由の条件1・2・3』 春秋社