2021年7月号記事
ニッポンの新常識
軍事学入門 12
中国が仕掛ける「人に優しい戦争」
社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について
専門家のリレーインタビューをお届けする。
安田 淳
中国は最終的に、どのような国家を築こうとしているのでしょうか。習近平国家主席は2012年に「中国の夢は中華民族の偉大な復興」というスローガンを掲げました。中国の夢を突き詰めると、「2050年までに世界一流の軍隊をつくり上げる」ことを意味します。
習氏は、次世代AI発展計画や軍民融合発展戦略、中国製造2025(*)などの戦略を実行してきました。それら全てに関係するのが、私が監訳した『知能化戦争』(中国軍上級大佐の龐宏亮著、五月書房新社)です。
知能化戦争とは、AI(人工知能)やITの技術を使って、兵器を効率的に運用することであり、最終的には人間の手を介さずに機械が自分で戦闘行動を判断する「自律型兵器」の完成を目指す戦略です。習氏は17年に、「軍事知能化の発展を速め、ネットワーク情報体系に基づく統合作戦能力、全域作戦能力を向上させる」と軍の知能化の推進を指示しました。