2021年3月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第100回
幸福実現党 党首
釈 量子
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大雪があぶり出す電力政策の失敗
"天気予報"ならぬ"電気予報"をチェックしなければならない時代が来ました。
世間がコロナ一色となるなか、日本列島は未曽有の電力危機に見舞われています。
北海道から九州まで、大手電力9社の「でんき予報」が示す電力使用率は1月12日、91~99%を記録し、軒並み赤信号が灯りました。余力として最低限必要とされる3%を切ったエリアもありました。大規模停電の可能性もあり、暖房が使えなくなれば命にかかわります。
本来は災害時などに使う「非常用電源車」も駆けつけ、辛うじて電力需要を支えているという状況です。
支持率のために見て見ぬふり
ところが、この緊急事態を前に、政府の動きが極めて鈍いのです(1月16日時点)。
電力会社や電気事業連合会が「電気の効率的な使用のお願い」を呼びかけています。しかし政府は「現時点で節電は想定していない」というスタンスです。経済産業省やエネルギー庁のサイトには、何の注意喚起もありません。
「緊急事態宣言が発令されている時に、日常生活にさらなる不便を強いる節電要請で、内閣支持率の低下に追い打ちをかけたくない」という打算が働いていると言われています。
太陽光は戦力外LNGは届かない
そもそも電力危機が発生していること自体が、政府の失政に他なりません。
露呈したきっかけは、日本海側を中心に襲った、記録的な寒波・大雪です。ただでさえコロナの「巣ごもり」で増えていた暖房による電力需要が、あまりの寒さで爆上がりしました。
そこに電力供給体制の綻びが重なります。
莫大な国民負担により大量に導入された太陽光発電機は、雪と悪天候で戦力外。ドカ雪が降った北陸管内などでは、電力使用率99%という極限状態にまで達しました。
そして今回、最も大きく、かつ深刻な要因が、火力発電の主な燃料となっている液化天然ガス(LNG)の供給不足です。
日本の電源構成におけるLNGの比率は、2010年に29%でした。しかし福島第一原発事故以降、全国の原発がほとんど動いておらず、LNGへの依存度が40%に跳ね上がりました。
命綱であったLNGが、「中国・韓国など東アジアにおける需要急増」「カタール等のLNG供給国における設備の故障」「コロナの影響によるパナマ運河の渋滞」によって、入ってこなくなっているのです。
幸福実現党は、南シナ海や台湾海峡など、日本に燃料を運ぶ船の通り道が封鎖されると、日本の産業が壊滅すると警鐘を鳴らしてきました。今、このシーレーン危機が模擬的に現れていると言えます。
そんななか、全国の電力会社は石炭火力発電所をフル稼働することで、なんとか綱渡りをしている状況です。政府が肝煎りで進めようとしている「脱石炭火力」が実現していれば、とっくに大停電になっていた可能性があるのです。
大雪で道の除雪もされず、一切の外出ができない状態が続いていた福井県坂井市の様子。
脱原発のツケと脱炭素への警告
つまり今回の電力危機は、政府の10年来のエネルギー政策のひずみを一気に顕在化させ、かつ、脱炭素に急速に舵を切ろうとしていることに、警告を発していると言えます。
アメリカではバイデン氏が、気候変動の問題を「安全保障の最重要課題」として取り組む方針を打ち出しています。気候担当特使に、オバマ政権で国務長官を務めたジョン・ケリー氏を任命するという目玉人事からも、力の入れようが伺えます。
世界的な「脱炭素」「脱石炭」「再エネ推進」のうねりにのみ込まれる前に、日本は今回の大雪で"頭を冷やす"必要がありそうです。「CO2=地球温暖化」神話から、いち早く抜け出さなければなりません。
直近の電力危機を回避するためには、原発の即時再稼働が技術的な理由で難しいなら、国民に節電への協力をお願いしつつ、エネルギー政策の修正を打ち出すくらいの潔さも必要でしょう。
この国のサバイバルのためにも、エネルギーミックスのあり方を根本から見直す必要があります。