《本記事のポイント》
- 南樺太の日本への割譲はなぜ成功したのか
- 「ドイツ劣勢」の特ダネ情報は無視され、米英相手に戦争に突き進んだ
- 大川総裁の霊言は「究極のインテリジェンス」
ファイブ・アイズへの日本の加盟は、同盟のコアにある秘密の共有を意味し、同盟関係を確実に深化させるものである。
しかもそれは、全体主義国家・中国が台頭する中で、西側の自由で民主的な価値観を守るために必要なことでもある。
だが日本は、ファイブ・アイズに加盟するには、根本的にインテリジェンス・リテラシー(インテリジェンスの本質と重要性を深く理解すること)を高めなくてはならない段階にあるようだ。
戦前のインテリジェンス・リテラシーが欠けた場合の失敗例などをもとに、インテリジェンスの重要性について語ってもらった。
(聞き手 長華子)
元航空自衛官
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
──前回は日本がファイブ・アイズに加盟するべきだというお話をいただきました。加盟に至る前段階として、日本はインテリジェンスについて、それほど重要視してこなかったという問題があるのではないかと思います。
日本のインテリジェンス活動の低調さは否めません。戦後はその傾向が顕著で、対外情報収集活動は疎かにされてきました。"information"と"intelligence"という言葉をともに「情報」という言葉で翻訳し、両者を明確に区別してこなかったことからも、インテリジェンスの重要な価値が理解されてこなかったし、十分に活用されなかったことを示しています。
南樺太の日本への割譲はなぜ成功したのか
──では「情報(information)」と区別される意味での、インテリジェンスとは何を意味するのでしょうか。
元CIAのシャーマン・ケント氏は、「インテリジェンスの本質とは、唯一最上の答えを探究することにある。(中略)それは最重要対外情報に関係のある知識であり、外交政策を決定する場合、その基礎となる知識である」と定義づけています。
外交政策の成否を決定したインテリジェンスの例を一つ挙げましょう。
1905年のポーツマス講和会議の際の出来事です。当時、ロシアは日本に対して、樺太の割譲要求を取り下げるよう求めていました。戦争を続ける余力がほとんど残っていなかった日本は、何としても講和に持ち込む必要があったので、ロシアに妥協するしかない状況でした。そうしなければ交渉は決裂という段階まで追い詰められていたからです。
その結果、日本は賠償金だけでなく、領土割譲についても全て諦める方向で話がまとまりかけていましたが、その最後の瞬間に、交渉全権を持って臨んでいた小村寿太郎代表のもとに、東京経由で極秘情報がもたらされました。
「ロシア皇帝は樺太の南半分なら割譲してもいいと考えている」というものでした。それはロシア駐在のイギリス情報部からもたらされた秘密情報でした。当時日英同盟があったからこそ入ってきた情報です。そのお蔭で、日本は樺太の割譲を諦めなくて済んだのです。
──現代の日本は、中国のご機嫌をとっていればいいのではないかとか、アメリカについていけばいいのではないかなどと考えているため、インテリジェンスについて国家戦略がないように見受けられます。
インテリジェンス・リテラシーの問題ですね。四方を海に囲まれた日本は、外敵の侵入が困難で、安全保障および関連する情報収集の必要性は、あまり高くありませんでした。
戦国時代には国内諸国の情報収集のために忍者が用いられましたが、彼らは武士階級よりはるかに低い地位に置かれていました。
英国では情報収集にたずさわる要員が「紳士の職業」と見なされてきたことと比べると、情報に対する考え方が大きく異なります。
それでも日露戦争時の明石元二郎大佐の活躍など、インテリジェンス組織の活躍は見られます。また鎌倉から江戸時代には隠密が活躍しており、明治から戦前までは特務機関が存在していましたが、総じて、日本は歴史的に情報に対して極めて関心の薄い国であったのは否めません。
「ドイツ劣勢」の特ダネ情報は無視され、米英相手に戦争に突き進んだ
──インテリジェンスを生かせていたら、第二次大戦時、防げていた失敗事例はありますか。
たとえば、日米開戦直前の1941年の11月には、こんなことがありました。
スウェーデンで情報活動に従事していた小野寺信少将の活躍により、ナチス・ドイツの対ソ作戦(バルバロッサ)で、ドイツ劣勢の特ダネをつかんだのです。
日本の参謀本部に「絶対に日米開戦は不可である」と電報を打ちました。この情報は非常に重大でした。なぜなら日本はドイツの勝利を期待して米英を相手に戦争をしようとしていたからです。
三国同盟の戦力を前提としていた日本にとって、ドイツが劣勢であるならば、戦争を始めるという選択肢はそもそもなかったはずです。
小野寺少将は、この重大な電報を30通も打ち続けましたが、ドイツを過大評価する大本営は、この電報を無視してしまいます。
その後、日本軍はフランス領インドシナに進駐しましたが、ドイツに呼応した動きと捉えたアメリカが対日石油禁輸措置を取ったため、日米戦争が不可避になってしまいました。
ソ連のスパイのゾルゲの活躍で、第二次世界大戦でソ連が勝利するきっかけを与えた
このバルバロッサにソ連が勝てたのも、日本に潜入していたソ連スパイのゾルゲが、「日本はソ連を攻撃しない」という重大情報をソ連に知らせたことが大きな要因となりました。
ソ連は極東軍を西部戦線に回して、ドイツに当てたことで、ドイツとの戦いに勝てたのです。
それが結局はソ連の勝利につながり、第二次世界大戦の様相は大きく変わってしまいました。今の日本もスパイ天国ですが、当時も情報を取られ、同盟国を危険にさらしました。その時、ソ連が勝利しなければ、満州や北方領土への侵略はなかったかもしれません。
ミッドウェー海戦の作戦は筒抜けで、空母4隻を失う
もう一つ、有名な事例に、ミッドウェー海戦でのずさんな情報管理があります。このような大作戦は最高機密に属するはずですが、一般市民の間でも「次はミッドウェー」と、うわさになっていたという話もあります。
一方、必死だった米軍は、日本の作戦目標が「AF」であることはつかんでいましたが、それがどこなのかが分からないでいました。
このため米軍は策略を仕掛けます。「ミッドウェーで海水の濾過装置が故障し真水が不足している」とニセの電文を平文で打ちました。すると、これを傍受した日本軍が、「AFは真水不足」と日本本土に通信したのです。
その結果、日本はアメリカに「AF」がミッドウェーであることを突き止められ、アメリカの待ち伏せを受けます。
一方の日本海軍は、作戦が筒抜けで待ち伏せにあっていることに全く気づいていませんでした。それが、その後の戦闘における数々の判断ミスにもつながっていくのです。その結果は、正規空母4隻の沈没で、これが大東亜戦争のターニングポイントとなってしまいました。
大川総裁の霊言は「究極のインテリジェンス」
このようにインテリジェンスは、現在起こりつつある、または将来起こり得る事態に対して、最も効果的な対応をするための決定的な指針となるものです。
「日本がソ連と戦う意志がない」と分かったソ連が、西部戦線に戦力を集中できたように、他国の意図や、国際情勢を熟知することで、戦況をも有利に展開させることができるようになるものです。
戦力は外側から見えても、戦意は見えません。その点、習近平氏やプーチン氏、金正恩氏の霊言を収録し、彼らの本音を探り出す大川隆法・幸福の科学総裁の公開霊言シリーズは、「最終兵器」であり、「究極のインテリジェンス」と呼べるものです。
現在、世界で拡散している新型コロナウィルスについて、中国は自然発生説を唱え、全世界はコロナが自然界から発生したものだと"信じ込まされている"状況に近いです。しかし習氏は霊言で、「(コロナウィルスの)種類は、1万種類以上、研究しています」と認めています(『習近平の弁明』)。
このことから、もはや生物兵器による第三次世界大戦が仕掛けられていると読み解くことができ、中国のプロパガンダに乗せられるのを防ぐことができるのです。
次回の最終回では、ファイブ・アイズに加盟するにあたっての、日本のインテリジェンスの課題について、お話ししていきます。
HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の「インテリジェンス」などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。
2020年12月27日付本欄 期待される日本の「ファイブ・アイズ」への加盟 同盟のコアにあるインテリジェンスの共有が同盟を深化させる(前編)【HSU河田成治氏インタビュー】
https://the-liberty.com/article/17942/
2020年11月29日付本欄 世界戦争進行中! 中国は「海警」で尖閣を取りに来る その時に備えて日本はどうすべき? 【HSU河田成治氏インタビュー】
https://the-liberty.com/article/17845/
2020年8月15日付本欄 いまの日本は尖閣を守れない マイナー自衛権を認め海上自衛隊を送るべき
https://the-liberty.com/article/17471/
2020年5月31日付本欄 コロナ禍に便乗し対外侵出する中国に打ち克つには? 国防費倍増で侵略を止めよ 【HSU河田成治氏寄稿】