2020年4月号記事
対談企画
七海 ひろこ × 江口 克彦
政治にも「経営力」を
松下幸之助流・日本繁栄の鍵
「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏のもとで23年間側近として過ごした、
PHP総合研究所元社長である江口克彦氏と、幸福実現党広報本部長の七海ひろこ氏に、
「日本と東京の繁栄を創る 新時代に求められるリーダー像」をテーマに語ってもらった。
江口オフィス 代表取締役
江口 克彦
プロフィール
(えぐち・かつひこ)1940年、愛知県生まれ。慶應義塾大学卒。松下幸之助の側近を23年間務め、松下哲学を伝えるための講演や執筆活動を精力的に行う。元参院議員、PHP総合研究所元社長、松下電器産業(現パナソニック)元理事。著書に『正統派リーダーの教科書』(東洋経済新報社)など多数。
江口克彦著
東洋経済新報社
七海ひろこ氏(以下、七): 松下幸之助先生が創設したPHP総合研究所は、「Peace and Happiness through Prosperity(繁栄によって平和と幸福を)」の頭文字に由来しています。江口先生は、「繁栄」という言葉を、どう定義されていますか。
江口克彦氏(以下、江): 「衣食足りて礼節を知る」という言葉があります。人間には物心両面の幸福が必要ですが、物質的に餓鬼であっては心も荒みます。まず、国民すべてが今晩の食事を心配することがない状態を実現することが、「繁栄」だと思います。
七: 今のお話で、「恒産なくして恒心なし」という言葉を思い出しました。一人ひとりが生計を立てる中で、生きがいを持って、未来に希望を抱ける社会が、政治の理想でもあると思います。
「税の原点」とは
七: 一方の現実はといいますと、2019年10月に消費税が増税され、企業の倒産件数も、リーマン・ショックが起きた2008年以来、11年ぶりに前年を上回るなど、景気の見通しが悪くなっています。
江: そもそも、税金の始まりは、「自分たちで少しずつお金を出すから、地域の面倒を見てくれる人を決めよう」ということにあったと思います。だから、必要に応じて徴税するのはやむを得ない。しかし、だんだんとその税金が、政治家や政府の私腹・私欲のために集められるようになってきました。
私も長年、経営を担っていましたが、経営には、合理化と迅速化、成長戦略が必要です。こうしたことを何も考えずに、「足りないから税金を増やそう」と考えるのは、おかしいと思います。
七: 本当にそうですね。幸福実現党の大前提の考えは、「税金をできるだけ安くして、民間の活力を増やす」というものです。政治家は、税を取って使うだけではなく、「一人ひとりの力を最大限引き出すために、どうしたらいいか」を考えるべきだと思います。
幼保は「税」より「民」で
幸福実現党 広報本部長
七海 ひろこ
プロフィール
(ななみ・ひろこ)1984年、東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、(株)NTTデータに入社。2009年、幸福の科学に入局。国際局長、理事などを歴任し、15年より現職。著書に『七海ひろこの日本丸ごと富国宣言』(幸福実現党刊)、『心の力で豊かになろう』(幸福の科学出版)。
七海ひろこ著
幸福の科学出版
江: 保育士不足の問題などにしても、税金を使わずに民間の力を借りてできないか、知恵を出したらいいと思うんですけどね。
例えば最近では、身体障害者の雇用義務があります。同じように、一定以上の資本金の企業に、保育士や介護士の資格を持っている人を1割採用するよう促す。給料は企業持ちにして、5年間は保育所や介護施設に派遣するという発想だってあると思うんです。
七: 待機児童解消のため、政府は補助金を入れるという形で手を打っています。結局、税金です。
江: 少なくとも、税金を上げる前に、政治のあり方を見直すべきでしょう。
七: そのときにやはり大事なのが、規制緩和です。保育も、施設面積あたりの子供の人数や園庭の広さ、滑り台の有無にも決まりがある。すると、株式会社としてもハードルが上がって、参入しにくい。
一方、アメリカのトランプ大統領は、要らない規制を見直して、とっぱらいました。東京で保育所の参入規制や建築規制を緩和できたら、さまざまな新ビジネスが生まれて、百花繚乱の時代を創っていけるはずです。
江: 私は参院議員でしたが、もし50歳くらいで国会議員になっていたら、もっと世の中を変えられていたと思います。代わりにやってくださいよ。
七: 幸福実現党がバトンを引き継げるよう頑張ってまいります。
人を活かす減税、泣かす増税
七: 人の可能性を引き出すという意味では、頑張っている企業が報われるように、法人税を下げることも大きいのではないかと思っています。
世界の都市総合力ランキングによると、東京は総合3位でしたが、法人税の高さなどが足を引っ張り、経済分野では僅差で北京に抜かれている状態です。
江: 私は、すべての税金を見直す必要があると思うんですね。相続税や贈与税も深刻な問題だと感じています。
京都の料亭に行くと、女将さんがほろほろ涙するわけです。それはどうしてかと言ったら、子供に代を継がせる時に、相続税が要る。大きな料亭だったら、それは何千万円で済まないですよね。「毎日毎日、相続税のために働いているようなものです」と言っていました。実際に、西陣や祇園でも、町屋がどんどん潰れています。すると、そこを更地にして、ペンシルビルが建つ。実に醜い京都になっていくわけです。
七: 私も東京で、相続税について多くの方からお悩みの声をいただいています。
最近では、中小企業の事業承継の問題もあります。ただでさえ後継者不足で黒字倒産する企業が多い中で、後継者候補がいても、相続税の重みで承継できない場合もあります。これを解決するには、東京で、相続税を廃止していく。松下先生は「無税国家」というビジョンを掲げましたが、東京の財政は黒字です。日本の中で「無税都市」を目指せる可能性が一番ある場所だと思っています。
江: 日本や東京を「繁栄」させるため、ぜひチャレンジしてください。日本は、経済的に委縮しています。GDP(国内総生産)などの経済規模はもちろんですが、国民一人ひとりの生活や人生を輝かせていく「ダイヤモンド国家」を目指すべきです。
七: 「ダイヤモンド国家」というのはとても素敵な言葉ですね。一人ひとりの可能性といった原石を磨き、解き放っていく。そのためにも、減税や規制緩和は重要ですね。
──日本は「ダイヤモンド国家」を
目指すべきです。
国の「徳」を考える
七: 1977年に松下先生が記された『21世紀の日本』という書籍があります。この本では、世界中の人たちが東京に集まっていて、宗教を中心に日本が、東京が栄えているという2010年の未来が描かれていたのが、とても印象的でした。
江: 最終章の「首相の演説」では、日本の目標について「徳」という観点で語られていました。
私は、国としての目標を定めるならば、「富民有徳国家」を掲げるべきだと思っています。
まず「富民」ですが、明治維新後は良かれ悪かれ、国が中心で「富国強兵」を進めました。ただ、国は国民が集まって成り立っているわけです。これからは、「国民一人ひとりが豊かになることは、国が繁栄することにもなる」と考えるべきです。
また「有徳」ですが、「国民一人ひとりが徳のある国家」を目指していく。特に、政治家は、国民の範たる存在であるべきであって、本来は聖人君子たる覚悟を持たなければならないと思います。「国民の血税を集めて、政治家としての活動をしている」という強烈な意識を持つべきです。
ぜひ七海さんも、そのことを思いながら、国家のため、それ以上に国民のために活動を続けてほしいです。期待しています。
七: 幸福実現党は宗教政党ですので、神仏からいつも心を丸ごと見られているという思いで活動しております。徳ある政治家、徳ある国造りを目指して、活動してまいります。
今日は、私にとっても人生の指針になるようなお言葉もいただきまして、本当にありがとうございました。
──人の可能性を引き出すことが
「繁栄」につながります。