《本記事のポイント》

  • 京都の子育て世帯の「普通の暮らし」には、月48万円必要という調査結果が出た
  • 内訳の1~2割は社会保険料と税金で、「使えないお金」
  • 金額の多寡を議論するより、「非消費支出」の是非を考えるべき

「普通の暮らし」に、30代家族4人なら月48万円必要──。

労働組合「京都総評」がこのほど発表したこの調査結果が、SNSで話題になっている。ツイッターでは「#月48万円」がトレンド入りし、喧々諤々(けんけんがくがく)の意見が飛び交っている。

京都総評は昨秋から今春にかけて、30代~50代のいわゆる子育て世帯が「京都で『普通に』暮らしていくためにいくら必要なのか」を調査。夫婦と子供2人の世帯で、30代なら月48万6900円、40代なら54万9800円、50代なら70万7500円が必要という調査結果を示した。

「普通の暮らし」とは、家賃が6万1000~6万7000円の賃貸マンションに住み、妻は専業主婦か、夫の扶養内での非正規もしくはパートタイム、夫の飲み会は月に1回4000円、小型自動車1台保有、などといった具合だ。

京都総評は、「京都で子育てをしながら『普通に暮らして』いくには、現在の賃金だけでは困難であることが明らかになった」と結論づけている。

SNS上では「48万円も必要とは思えない」といった調査の信憑性を疑う声のほか、「子供がいるとこれくらいかかる」「共働きしないと余裕がある生活はできない」「少子化になるわけだ」などの納得の声が上がっている。

毎月1~2割は「使えないお金」

調査結果の是非はともかくとして、注目したいのが金額の内訳にある「非消費支出」という項目だ。

年金や健康・雇用保険の社会保険料、所得税や住民税などの税金が、この「非消費支出」にあたる。30代で月約6万8000円、40代で約8万8000円、50代で約9万9000円が計上されている。収入の1割~2割が社会保険料と税金でとられることになる。

SNS上では、その金額の高さを嘆く声は意外に少なかった。「老後などを考えると仕方がない」という考えが浸透しているのかもしれない。

「毎月どれだけ社会保険料や税金を払っているのか」

しかし、金融庁が発表した「夫婦で2千万円の蓄えが老後に必要」という報告書が話題になったように、日本の年金制度はすでに破たん寸前だ。現行制度では、若い世代が大きく損をすることも分かっている。

健康保険も互助制度である一方で、ほとんど病院に行かない人が多い30代~40代の世代が毎月数万円を払う現状に、不公平感を感じる人も多いだろう。

それに対して、現役世代が納めた保険料を今の年金受給世代に支給する原稿の年金制度である「賦課方式」をやめ、自己責任で一定額を積み立てる「積み立て方式」に変えれば、老後に備えた「貯蓄」をつくることができる。それにより、「非消費支出」が半額になれば、毎月数万円の余裕が生まれる。

税金や社会保険料の負担が減り、自由に使えるお金が増えれば、消費は増え、企業の業績が上向き、景気は回復する。そうなれば、給料アップも夢ではない。

「普通の生活」に月48万円が必要という調査結果を嘆くのではなく、「毎月どれだけ社会保険料や税金を払っているのか」を問題視し、よりよい制度に変えることが求められているのではないか。

(駒井春香)

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