厚生労働省は27日、公的年金の将来的な見通しを示す「財政検証結果」を公表した。

財政検証は5年に一度、将来の人口や就業率、経済情勢などを考慮して100年先までの公的年金財政の見通しを点検する"定期健診"。6月に金融庁が「老後に夫婦で2千万円の蓄えが必要」とした報告書を発表したこともあり、注目が集まっていた。

検証の結果、給付水準は経済成長と労働参加が進んだ場合でも、約30年後には、現在より約2割低くなる見通し。一方で、所得代替率(現役世代の平均手取り月収に対する割合)は2047年度には50.8%で下げ止まり、制度の持続性は確認されたとする。

年金の"目減り"は、少子高齢化による年金制度の「支え手」の不足が理由の一つとして、「支え手」を増やす制度改正を実施した場合の給付水準の変化も試算。

基礎年金の供出機関の拡大や、パートなどの短期間労働者に対する厚生年金の適用拡大、公的年金の受給開始時期の上限を現行の60歳~70歳から75歳までへの引き上げ、在職老齢年金制度の縮小や廃止などを行えば、給付水準を改善する効果があるとも公表している。

年を追うごとに低下する所得代替率

根本匠厚生労働相は財政検証結果の総括として、「経済成長と労働参加が進むケースでは、所得代替率50%以上を確保できることが確認された。(年金制度は)おおむね100年、持続可能になる」と述べている。

しかし、所得代替率50%を維持していると言いつつも、試算では、年を追うごとに所得代替率は低下していく。例えば、すでに年金を受け取っている65歳の場合、現在は61.7%だが、70歳になる2024年には58.5%、80歳になる2034年には49.1%まで低下する。

今年30歳の世代はさらに深刻だ。65歳になる2054年には50.8%だが、70歳になる2059年には48.1%。85歳になる2074年には、40.9%まで下がると試算されている。厚労省は「100年持続可能」と胸を張るが、本当にこの年金の仕組みが成り立つのか。

そもそも、経済成長や労働参加が進むという前提における検証は、どこまで信憑性があるか疑わしい。

現政権は10月に消費税を現行の8%から10%に引き上げることを予定している。1997年に消費税を5%に引き上げて以降、「消費増税をすると、人々は消費を控えるようになり、景気が悪くなる。その結果、全体としての税収が減る」ということが、各種統計で明らかになっている。増税により景気が悪化する未来が見えているにもかかわらず、経済成長が前提の検証は、甘いと言わざるを得ない。

「家族の絆」を取り戻すべき

今回の検証で、若い世代が大きく損をしていることが明確化された。現在の年金制度は、やはり考え直すべきだろう。

若い世代が損をしないためにも、現役世代がリタイア世代に「仕送り」をする現行の「賦課方式」はやめるべきだ。「積み立て方式」の年金を新設し、若者は自分の老後のためにコツコツと積み立てることが望ましい。

リタイア世代も、元気なうちは生きがいのためにも働き続けられる、「生涯現役社会」を目指すべきだろう。

戦前の日本では、ほとんどの高齢者が年金がなくても経済的に困窮せず暮らしていた。それは家族や親せき同士が絆によって、支え合ってきたからだ。「正当な家族観」とはどういうものかを考え直し、家族の絆を取り戻すことが、本当の"年金政策"ではないか。

(駒井春香)

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