《本記事のポイント》

  • イギリス総選挙で、与党・保守党が歴史的勝利
  • ジョンソン首相とトランプ大統領には共通点がある
  • 混迷の時代に、政治家に求められる「責任」

イギリスの総選挙で、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党が単独過半数となる365議席を獲得した。保守党としては、サッチャー政権下の1987年の総選挙以来の大勝利となった。

EU離脱の期限である2020年1月31日までに離脱を行うため、今月17日にも、離脱に向けて議会の審議を再開する。

英議会が離脱協定案を承認すれば、イギリスは1月にEUを離脱。その後は、20年末までを移行期間とし、その間にEUと自由貿易協定(FTA)交渉を進め、期間内での締結を目指す。

保守党が勝利した要因

イギリスでは2016年、国民投票でEU離脱が決まった。しかし、英政府がEUと取りまとめた協定案について、英議会は4回にわたり否決。最大の原因は、第1党の保守党の議席が過半数を下回っていたことだった。

その結果、離脱期限は延期され続け、膠着状態に陥っていた。今回の総選挙の目的は、そうした状況を打開することだった。

ジョンソン氏は、「Get Brexit done(イギリスのEU離脱を完了する)」というスローガンを掲げ、総選挙に挑んだ。保守党が過半数を大幅に上回る議席を獲得したのは、ジョンソン氏が政治家として、自らの意思や国家ビジョンを明確に打ち出したからだろう。

対照的だったのが、野党・労働党だ。離脱派・残留派の意見をまとめきれず、「再度国民投票をする」という主張にとどめた。その結果、労働党は議席を大幅に減らした。中には、労働党の地盤で保守党が勝利した選挙区もあったほどだ。

今回、有権者は、ジョンソン氏が掲げるビジョンにイギリスの未来を託したと言える。

これから政治家に求められる力

ジョンソン氏は、「イギリスのトランプ」と評される。確かに、ストレート、かつ、型破りな発言など、従来の「政治家像」から逸脱している。

ただ冷静な目で見れば、ジョンソン、トランプ両氏の共通点は「責任」に対する姿勢ということが見えてくる。

トランプ氏が大統領に就任した2017年1月、大川隆法・幸福の科学総裁は、大統領就任演説を受け、トランプ氏の仕事に対するスタンスについて、こう指摘していた。

『分かりやすくて具体的だ』ということは、『何をしようとしているかが分かる』ということであり、つまりは、『できたか、できなかったか』を、誰もが国民の目線で判定できるということです。要するに、『分かりやすく具体的に言う』ということは、『その内容について責任が生じる』ことを意味するわけです 」(『仕事ができるとはどういうことなのか』)

トランプ氏は「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国にする)」というスローガンを掲げ、大統領に当選。大規模な減税や規制緩和などさまざまな政策を実行し、就任後2年半で、600万人の新規雇用の創出、ダウ平均の史上最高値、過去51年で最低水準の失業率などを実現している。

ジョンソン氏も、一貫してEU離脱を主張。今回の総選挙の結果を受け、今後、EU離脱に向けた手続きを進めていく。EUとのFTA交渉のために設けられた期間は1年にも満たないことから、懸念する声も上がるが、ジョンソン氏は総選挙で英国民に誓ったEU離脱を実現させるはずだ。

ジョンソン、トランプ両氏は、有権者に自らの意思やビジョンを明確に示し、それに伴って生じる「責任」を引き受けようとしている。こうした姿勢は、世界情勢の複雑化が予想されるこれからの時代、もっとも政治家に求められるものと言えるだろう。

(飯田知世)

【関連書籍】

『仕事ができるとはどういうことなのか』

『仕事ができるとはどういうことなのか』

大川隆法著 幸福の科学出版

『ザ・リバティ 2020年1月号』

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幸福の科学出版

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