2019年11月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第84回
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
香港の自由を守り
真の「日中平和」を
8日31日から、香港を視察しました。
前日には、主要な活動家が相次いで拘束され、市民の怒りは頂点に達していました。
ところが、現地で見たデモの風景は、日本のメディアが報じる「暴動」とはかけ離れたものでした。小さな子供を連れた夫婦も多く、広場では市民が賛美歌を合唱。夜になると、警察の介入に反発したデモ隊のボルテージも上がりますが、銀行が多いエリアでも、強盗などはありません。話をしたフランス人記者も、倫理性の高さに驚いていました。
過激化しているのは、むしろ香港警察の方です。その夜、警察のデモ隊排除により、多くの負傷者が出ました。現地でお会いした民主派の女性議員であるクラウディア・モー氏は、当局側が負傷者を10人から7人に修正し、「消えた3人」が重傷だったことを指摘。「3人の死亡が隠ぺいされた」ともささやかれています。
そんな中、危惧されるのが、10月1日、中国70周年の「国慶節」を前に、「第二の天安門事件」とも言うべき武力鎮圧が行われる可能性です(9月18日時点)。
9月中旬、東京・新宿で幸福実現党が行った香港支援デモ。
(1)親中路線の転換を
この状況に対して、アメリカは「香港人権・民主主義法案」の成立に向けた議論を進め、旧宗主国のイギリスも「逃亡犯条例」改正案を非難しました。ドイツのメルケル首相も、香港の自由と権利が守られるよう中国の李克強首相に直接伝えています。
6月の大阪G20サミットの際、安倍晋三首相は中国の習近平国家主席との会談で、「一国二制度のもと、自由で開かれた香港の繁栄が重要だ」と指摘しました。
しかしその後は、香港当局による市民への暴力が激しくなっても、黙り込んでいます。
日中の経済協力が強まる中、来年は習主席の国賓としての来日や東京五輪などが控えていますが、もしこうした理由で香港の不正義に声を上げないのであれば、日本は再び「エコノミックアニマル」と揶揄されかねません。安倍政権が、「価値の外交」を謳うならば、香港の自由と民主主義を守るよう、習主席に直言すべきです。それこそ真の「日中平和」の実現です。
(2)邦人保護名目で自衛隊派遣
また日本政府は、香港にいる2万人を超える邦人救出にも備えなければなりません。
万一、人民解放軍が香港を蹂躙するような局面が近づけば、国民救出のため自衛隊を派遣することは、当然考えるべきです。
こうした考えは一見、過激に見えるかもしれません。しかし、第二次安倍政権の発足直後の仕事は、2013年1月にアフリカのアルジェリアで発生した人質事件への対処でした。日本企業が狙い撃ちされ、10人の日本人の命が失われました。
この教訓をどう活かすかというのが、安倍政権の原点の一つだったのではないでしょうか。他国では、自国民の救出は「自衛権」の行使として、当たり前に行われていることです。少なくとも派遣準備は必要です。
(3)国防方針の転換点に
香港問題は、日本にとって対岸の火事ではありません。自国の問題として捉えて真剣に向き合う必要があります。すでに、沖縄の尖閣諸島近海では、毎日のように中国公船が現れ、領海侵犯や接続水域への侵入を繰り返しています。日本が香港近海に艦船を出すことは、「尖閣や台湾を守る意志」を示すことにもなります。
香港問題について、日本は深刻な人道的問題として声を上げるべきです。中国に平和と繁栄、民主、自由の重要さを訴え、人権を大切にする国となるよう、導いていく時です。
Column
世界が香港を救うアイデア
自衛隊は「災害派遣」で香港沖へ
写真:AP/アフロ
日本が香港の邦人保護のために自衛隊を派遣するということは、突飛な考えではない。自国民に危害が及ぶ恐れがある場合の在外邦人の保護は、当然の自衛権であり、国連憲章などの国際法で認められている。
1976年、ハイジャックされた民間旅客機がウガンダの空港に着陸した際、イスラエルは自国民を救出するために、ウガンダ政府の合意を得ずに軍の特殊部隊を送り、人質を奪還した。
しかし日本では、邦人保護のための法制度が整っているのだろうか。
確かに日本では、2013年のアルジェリア人質殺害事件後、海外の邦人保護に関する自衛隊法の改正が行われた。しかし、「戦闘行為が行われないと認められる」など、ハードルの高い3つの要件を満たさなければならない。もし、そうした法律にとらわれて初動が遅れ、日本人の命が失われれば、国民の生命や自由を守る幸福追求権を謳う憲法13条に違反する、という見方もできる。
そこで、いざという時には大胆に「災害派遣」と解釈し、合法的に自衛隊を香港沖に迅速に向かわせる、という選択肢も有り得る。
現時点においても、香港におけるデモ隊への弾圧を、習近平政権がつくりだした「人的災害」とみなすことができるだろう。
例えば、2016年の熊本地震でも派遣された海上自衛隊のヘリ空母「いずも」は、乗員以外に約450人を収容でき、食料や医療行為なども自己完結できるため、有用だ。
そして自衛隊派遣の議論をすること自体が、「第二の天安門事件」を防ぐある種の抑止力となるはずだ。
イギリスが立ち上がる
写真:AFP/アフロ
香港市民の間から、旧宗主国であるイギリスに助けを求める動きが起こっている。
1980年代、イギリスが中国と香港返還の交渉を行っている際、「中英共同声明」というものが発表された。この中では、「中国は一国二制度をもとに、社会主義を香港で実施しない」「香港の資本主義の制度は50年間維持される」「外交・国防以外は高度な自治権を認める」ことなどが確認されている。
現在の中国はこの声明を踏み倒している。つまり香港問題において、イギリスは「当事者」。だからこそ、「イギリスが一肌脱ぐ」という選択肢が期待されている。
イギリスの政治家も、その期待に応え始めている。英下院・外交委員会のトム・タジェンダット委員長は8月、英国籍の付与に賛同する考えを表明。現首相のボリス・ジョンソン氏も「香港の人々を支持しており、彼らのために喜んで声を上げたい」と述べている。
もし「イギリスが香港の人々のために行動を起こす」とすれば、とりうる行動は次の4つが挙げられる。
(1) かつて英国籍だった香港の人々が希望す れば、英国籍の付与を進める。
(2) 英国籍の付与を進めることで、「自国民保 護」を名目にしてのイギリス軍の香港沖へ の派遣も検討する。
(3)「香港をイギリス連邦の一員とみなす」と 一方的に宣言する。「中英共同声明の違反」 を名目とする。
(4)「香港と合意なき併合をする」と宣言する。
日本が香港支援の姿勢を打ち出し、イギリスと連携をもちかければ、こうした「ウルトラC」も引き出せるかもしれない。