AfD報道官のバスティアン・ベーレンス氏。

新興政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、2013年に立党して以来、急速に勢力を伸ばしている。2017年のドイツ連邦議会選挙でも、初めて国政レベルで議席を獲得しており、その動向が注目される。

9月1日に投開票されたドイツ東部のザクセン州、ブランデンブルク州での州議会選挙では、同党が第2党に躍進した。これに対して、メルケル政権を支える「キリスト教民主同盟(CDU)」「社会民主党(SPD)」の二大政党は退潮する流れとなっている。

今回の選挙では、特にザクセン州で、AfDの得票率は27.5%となり、CDUの32.1%と並ぶ勢いだった。今後のドイツ政治に大きな影響を与えていくとみられる。

AfDのスポークスマン、バスティアン・ベーレンス(Bastian Behrens)氏に、同党躍進の背景について聞いた。

(聞き手:藤井幹久・幸福の科学国際政治局長)

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ドイツを襲った難民問題

──「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢力を伸ばしています。

ベーレンス氏(以下、ベ): 第一の理由は、2015年に起きた難民の問題です。当時、100万人以上の難民がドイツに押し寄せましたが、その多くが不法移民でした。しかし、メルケル政権は国境を守る姿勢を見せなかったので、国民の怒りが非常に高まりました。AfDは、この問題に焦点を当てた唯一の政党だったのです。

──移民問題では独自のスタンスをとっています。

ベ: ドイツでは、大量の不法移民が入ってきたことで、殺人、強盗、レイプなど、あらゆる犯罪が起きています。100万人もの難民が"招かれて"ドイツに入ってきたことが原因です。

ただ、強調しておきたいのですが、私たちはよそ者を排斥したいと考えているのではありません。不法移民を受け入れるべきではないと考えているのです。他の政党の政治家からは、「あなた方はレイシスト(人種差別主義)だ」とよく言われます。しかし、そうした見方は正しくないと考えます。私たちは法律を守り、秩序を守りたいだけなのです。

ドイツの保守勢力は、日本の移民政策をとても評価しています。日本は、違法な移民を入国させたりしないからです。日本では不法移民や不法移民の犯罪などの問題は、本当にごくわずかです。

AfDが支持を集めている第二の理由は、ドイツ政治における過去20年にわたる問題です。

キリスト教民主同盟(CDU)、社会民主党(SPD)、自由民主党(FDP)などの既成政党がありますが、AfDの立場から見れば、どの政党の政策も、あまり大きな違いがあるとはいえません。まるで一つの政党であるかのように見えます。

そこで、ドイツ人は「何か他に違う政党が必要だ。オルタナティブ(選択肢)がほしい」と考えたのです。

EUとユーロは崩壊するのか

──EUに対しても批判的なスタンスを取られています。

ベ: AfDは、国民国家としてのドイツを取り戻したいのです。フランスも、イタリアも、スペインも国民国家ですが、さらにその上にEUがあります。しかし、EUに「これはしてもいい」「これはしてはいけない」と決めてもらいたくはないのです。私たちは"ヨーロッパ"に反対しているのではなく、"ヨーロッパ連合(EU)"に反対しているのです。

──共通通貨ユーロにも反対のスタンスです。

ベ: ヨーロッパの多くの国々、特に南ヨーロッパの国々の経済は、ユーロに見合っていません。こうした国々の経済の実態に比して、ユーロは強すぎます。自国通貨があった時代には、経済の実態に合わせるために、自国通貨を切り下げることができました。そうすることで、経済が上手くいくように調整できたのです。

しかし、今はそれができなくなっています。たとえば、失業率が高い国も、通貨での調整ができません。だから、共通通貨ユーロには問題があるのです。

──南ヨーロッパ諸国はドイツ経済に依存しているということですか。

ベ: そうです。ギリシャの問題を解決するために、ドイツが財政負担をしました。ドイツで集めた税金を、南ヨーロッパの人たちのために使っているのです。本来であれば、ドイツで集めた税金は、ドイツのために使うべきです。

ドイツの経済力があるから、共通通貨ユーロが機能しているにすぎません。もう、これ以上、ドイツはこうしたことを続けられません。南ヨーロッパ諸国は、いずれ破綻することになります。EUも失敗に終わるでしょう。

ドイツ政治の新しい可能性

──今後の展望は。

ベ: これまで、AfDは連立政権には参加していません。しかし、いずれ数年のうちには、連立政権への参加を要請される可能性はあります。旧東ドイツの地域では、すでに10~20%の支持を受けているからです。ザクセン州のように20%以上の地域もあります。AfDは、正当な政治勢力として、もはや無視できない存在になっています。

──その歴史的な背景について教えてください。

ベ: 30年前に平和的な革命で、共産党政権が倒れました。東ドイツの人たちには、まだ、その記憶があります。だから、社会主義政党はまっぴらだと思っています。また、戦後の西ドイツでは、アメリカ主導で経済は豊かになりましたが、ドイツ人のアイデンティティーが失われてしまっているのです。

第二次世界大戦の前、ドイツ人には間違いなく肯定的な国家認識がありました。しかし大戦後、ドイツ人は肯定的な国家認識を持つことができずにいます。

私たちがドイツの国家意識が必要だと訴えても、左翼の政党や政治家が抑制してきます。ドイツの国家意識は、「戦争の時の過ちはもう二度と繰り返さない」「私たちは覇権国家でなくてもいいから、より良い国民でありたい」という程度のものだと主張するのです。

ドイツは、偉大な哲学者や音楽家など、多方面に優れた人材をたくさん輩出してきた国です。もちろん悪い歴史もありますが、それはドイツの歴史の中のほんの一部分であり、記憶すべき立派な歴史がたくさんあります。

私たちはこれからも、ドイツ人が正当な国家意識を持ち、国民国家となれるよう、活動していきたいです。

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