《本記事のポイント》
- たびたび見られる「富裕層は相続で財産を築き、貧富の格差が是正されない」という見方
- だが、日本の富裕層で最も多いのは、「自力」で財産を築いたパターン
- ヨーロッパや韓国などの貧富の格差と同列では語れない
10月の消費増税や、来年1月から始まる所得税増税。社会保険料の引き上げなどを含めると、現役世代の税負担率は年々高まっている。
そうした中で、富裕層に対する増税論が根強い。その根拠には、「親から多額の資産を相続され、貧富の格差が解消されない」という見方がある。本当にそうなのか。
相続で財産を築いているのは欧州の話!?
例えば、資産が10億ドルを超える、いわゆるビリオネアはどのようにして財産を築いたのだろうか。それを2014年に調査したのが、米ピーターソン国際経済研究所だ。
同研究所は、世界のビリオネア1645人を対象に、財産を得た経緯を「相続」と「自力」で分類した。
それによると、相続で財産を得た割合が高いのは、韓国(74.1%)、ドイツ(64.7%)、スペイン(53.8%)、フランス(51.2%)、イタリア(37.1%)だった。一方で、アメリカ(28.9%)と日本(18.5%)、イギリス(6.4%)は相対的に低かったという。
つまり、相続で財産を築く割合はヨーロッパが高く、日米は低いと言えよう。
日本のビリオネアは「自力型」が多数
では、日本で最も多いものとは何か。
それは、企業創業者(63%)であり、次いで相続(18.5%)、金融(11.1%)、株主・経営者(7.4%)だ。実際に長者番付のトップ50を見ても、名を連ねている人の多数が企業創業者である。
一般論として言えば、日本で財産を築いた人は「自力型」が多く、"棚からぼた餅"のように巨万の富を得ているわけではない、ということだ。そうした人々に多額の税金を課せば、日本から富裕層が逃げ、起業する人が大幅に減り、税収の稼ぎ頭がいなくなってしまうだろう。
今の日本に必要なのは、増税を強いる放漫財政を改め、税収の稼ぎ頭そのものを増やす「減税路線」だ。豊かな人を増やすことこそが、日本経済を成長させ、財政も長期的に安定させるカギとなるだろう。
(山本慧)
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