中東問題に詳しい有名ジャーナリストで、今回のアラブ革命の記事も数多く書いているトーマス・L・フリードマン。彼は24日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙で「中東諸国は大きく2種類に分かれる」と論じている。日本人には分かりづらい中東情勢を理解するための知識として有益なので、紹介する。

・  中東の国は2種類に分かれる。一つは歴史的に一定の領土を有し、国民のアイデンティティも強い「実体国家」(real countries)で、エジプト、チュニジア、モロッコ、イランがこれにあたる。

・  他方はtribes with flags(独自の旗を持つ部族の寄せ集め)ないし「人工国家」(artificial states)の性格が強いリビア、イラク、ヨルダン、サウジアラビア、シリア、バーレーン、イエメン、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦。これらの国では、植民地時代に引かれた人為的な国境線の内側に、好きで同じ国民になったわけではない無数の民族や宗派がひしめいている。彼らが同国民として融合したことは一度もない。

・  中東の民主化運動が前者の国々(イラン、エジプト、チュニジア)から始まったのは偶然ではない。これらの国には民族や宗派を超える同質的な国民集団が存在し、国民の相互信頼も強かった。後者の国々(リビア等)は民族対立が激しく、政変が起きても、民主化運動なのか民族間抗争に過ぎないのか区別が難しい。

中東諸国の政変は一様ではなく、欧米列強の植民地主義が国によって色濃く影を落としているわけだ。民主化運動が先んじて起きた3カ国中、イランとエジプトがイスラム以前に伝統宗教を有していた点も興味深い。日本人が中東情勢を深く理解し、少しでも世界平和に貢献するためには、やはり歴史の知識が欠かせない。(司)

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