《本記事のポイント》
- 在日外国人への日本語教育を充実させる「日本語教育推進法」が成立
- 今や外国人労働者なしでは日本経済は成り立たない
- 互いを理解し、愛と人情をもって文化や正しい歴史なども伝えるべき
日本国内で暮らす外国人への日本語教育の機会充実や質の向上を促す「日本語教育推進法」が21日、参院本会議で可決、成立した。
法案の基本理念は「外国人の児童生徒や留学生、就労者らに対し、日本語教育を受ける機会を最大限確保すること」。
国や自治体、外国人を雇用する企業が、外国人が日常生活に不自由しない日本語を身に着けるための教育や、教育機会を提供するよう努めることが明記された。
門戸は開かれるも日本語教育は不十分
2018年末時点の在留外国人数は過去最多の約273万人。外国人労働者の受け入れを拡大する新制度も4月からスタートし、在留外国人数は今後ますます増加する見通しだ。
しかし、日本で就労したものの、言葉の壁が厚くコミュニケーションが取れず、仕事についていけない外国人が問題となっている。
親とともに来日した子供たちも、「日本語教育の支援ができない」と義務教育への編入を事実上拒否されるケースや、授業が理解できないケースなどがあるという。その結果、就学していない義務教育年齢の子供たちが一定数存在し、高校進学率も約70%にとどまる。
東京福祉大学で学ぶ1600人超の留学生が行方不明になっている事件も記憶に新しい。勉強や就労目的で日本を訪れた外国人が学校や職場から姿を消し、不法残留となるパターンもある。
外国人への門戸は広がったが、日本語教育のための支援はまだ不十分で、学ぶ機会の多くもボランティアに頼っているのが現状だ。日本語教育推進法の成立は、こうした現状を変える一歩となることが期待される。
「お互いを理解し、助け合う」精神を
日本語教育も大切だが、そもそも忘れてはならないのが「お互いを理解し、助け合う」という考え方だ。
少子高齢化が進み、労働者人口の減少が問題となっている日本では、海外からの働き手は歓迎すべき存在だ。すでに日本経済は、外国人なしでは成り立たない。
しかし、日本で働こうと決意して来日しても、文化も言葉もまったく違う国で、友人もおらず、コミュニケーションも満足に取れず、言葉や文化を学ぶ機会もなければ、どうだろうか。たとえ、自国より"稼げる"としても、大きなストレスを抱えて暮らすことになるだろう。
受け入れる側である日本人がそれを理解し、共生できるような意識改革が必要だ。
大切な「仕事仲間」を愛と人情で支援
例えば企業は、外国人を単なる「労働者」と見るのではなく、「仕事仲間」「大切な人材」として、日本人同士と同様かそれ以上に「家族愛」や「義理人情」をもって接すること。そして、日本文化を理解できる機会を持つことが求められる。
国や自治体は民間と連携して、日本語と同時に、日本のマナーや常識、文化や正しい歴史観などを教える機関や機会を設けることが望ましい。また、悩みなどを相談できる窓口なども充実させ、孤独に陥らないよう工夫する。
定住が進めば、いずれ永住権や帰化を求める人も増える。その場合は日本語能力のほか、日本文化への理解や愛国心などの「基準」を満たすことも大事な条件の一つとなるだろう。
そして、「日本で学んだ技術や考え方で自国を発展させたい」と思う外国人を積極的に支援することも大切だ。日本が果たすべき役割は大きい。
(駒井春香)
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