《本記事のポイント》
- 米国務省の信教の自由担当大使が香港と台湾で講演
- アメリカの目標は世界に信教の自由を広げること
- 複数政党制の民主主義を中国に根付かせるべき
アメリカで米台高官の相互訪問を認める「台湾旅行法」が昨年3月に成立し、米政府高官の台湾訪問が相次ぐ中、米国務省のサム・ブラウンバック大使(信教の自由担当)が今月6日から13日にかけて香港と台湾を訪問した。
ブラウンバック大使は、香港を訪問し、外国人記者クラブで中国における信教の自由について基調講演を行い、その後、台湾を訪問。
この訪問は、昨年7月に内外の80カ国以上の活動家や聖職者やNGOの代表者を招いて「信教の自由を促進する代表者の集い(Ministerial to advance religious liberty)」のアジア版と言えるものだ。
昨年10月に行われたペンス米副大統領の演説と同様、ブラウンバック大使は、中国の宗教弾圧に対して厳しい批判を行った。
以下、香港での基調講演の内容の一部を紹介したい。
香港は「信教の自由」の模範たるべし
講演の冒頭で、ブラウンバック大使は、香港が「信教の自由」の面で諸外国の手本となるようにと述べ、現在10億人の魂が危機に瀕しており、それは「中国が宗教と戦争状態にある」からだと述べた。しかも「その戦いに、中国は勝つことはできない」と断言した。
「中国は、自国の憲法や人権宣言で規定されている『信教の自由』を守っていない」
「昨年、ペンス副大統領が信教の自由を促進する代表者の集いで語ったように、何を信じ、何を信じないかというのは最も根本的な自由であり、信教の自由が否定されたり破壊されたりするならば、言論、報道、結社の自由や、民主的な制度そのものが危うくなる。それゆえ、アメリカは、信教の自由のために戦い続ける。それはまた世界の平和と安全に資するものだからである」
悪化し続ける新疆ウイグル自治区における強制収容所でのイスラム教徒への弾圧については、「テロリスト対策」という言い訳が通じないほど大規模なものであると指摘。チベットにおける仏教徒への弾圧、法輪功の学習者の臓器移植問題、カトリックおよびプロスタントの信徒への迫害問題などについても言及した。
それぞれの宗教において迫害されている代表的な人物について触れながら、「信仰とは攻撃に遭うと強くなるものだ」と述べ、「私は迫害されている人たちの側に立つ」と、一信仰者の立場から切々と語った。
アメリカの目標は世界に信教の自由を広げること
そして、「中国共産党は、信教の自由を求める人々の要求に応えるべき」であり、アメリカは今後も信教の自由をすべての人々に広げる活動をしていくと宣言。「目標は、あらゆる政府や市民社会において、信教の自由が重要度の高いものとして扱われるようになること」だと述べた。
最後に、民主活動家でキリスト教徒に改宗し、昨年拘留された王怡牧師の言葉を引用して締めくくった。
「新疆ウイグル自治区、上海、北京、成都で、中国の統治者は決して投獄することができないもの――それは人間の魂である――を敵に選んでしまった」
宗教の自由について沈黙しがちな日本の民主主義とアメリカの民主主義との距離──。それはアメリカの民主主義は神への信仰に基づき、日本はよくて不可知論、悪くて唯物論に基づいた民主主義に陥っているところにある。
つまり、トランプ政権は、宗教についても強硬な発言をしているのではなく、揺るがない信仰心というアイデアリズム(理想主義)の立場から、唯物論国家・中国に対し、経済や軍事の面で巻き返しを図っているのである。
台湾と香港の声が代表される複数政党制を中国に
基調講演のなかで、ブラウンバック大使は、聴衆に向けて、「なぜ中国は信仰心のある人々を恐れるのか」と問いかけた。
この論点について、大川隆法・幸福の科学総裁は、年初に発刊した『毛沢東の霊言』の「あとがき」で、こう述べている。
「宗教は、特に本物の宗教は、常に、この世の価値観とは違う神の教えが降ってくる。目に見えぬ権威が臨在して、地上の権力を相対化し続ける。だから全体主義国家は、宗教の起こす革命を怖れる」
冷戦時代においても、信仰心こそ共産党が恐れた全体主義に抗う力であった。現在も同様で、香港や台湾には信仰心がある。今後、政治活動の自由を知る人々が、自由の主体となって議会制民主主義を創る時代がやってくるだろう。
大川隆法総裁・幸福の科学総裁は、3月3日に台湾で行われた講演「愛は憎しみを超えて」の質疑応答で、中国は将来、複数政党制を受け入れるべきだとしてこう述べた。
「 私の願いは、できれば、香港の人たちの意見も入れて、台湾や香港の考え方を中心とするような政党を中国大陸のなかで立て、中華人民共和国を、少なくとも二大政党制の国にすることです。『中国共産党』ともう一つ、例えば、『自由中国党』でもよいですが、そういった政党を立てて、お互いに政策争いをするような、本格的な議会制の国に変わってもらいたいと思います 」
ブラウンバック大使が述べたように、歴史的に信教の自由は、自由な複数政党制を形成する力として働いた。
ブラウンバック大使の痛烈な中国批判。これこそ「成熟した民主国家日本」も訴えなければならないものだろう。
(長華子)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『大川隆法 フィリピン・香港 巡錫の軌跡』 〔監修〕大川隆法/(宗)幸福の科学 編
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