1993年、法隆寺と共に日本初の世界文化遺産に認定された姫路城。国宝にも指定されている。写真提供:ピクスタ

2019年1月号記事

地域シリーズ 兵庫

生き残る企業の秘訣を探る

老舗はイノベーションの連続

現存する世界最古の企業トップ3を有し、200年以上続く企業数も世界一の日本。
老舗企業が存続する条件について、伝統と革新が融合する兵庫県で調べてみた。

(編集部 駒井春香)

日本の創業100年以上の老舗企業は、2017年時点で全国で約3万3千社(*1)。個人商店などを含めれば、10万社以上あるとも言われている。

さらに、世界の創業200年以上の企業数は、56%を日本企業が占め、2位のドイツに倍以上の差をつけて堂々の第1位だ(*2)。

なぜ日本に老舗企業が多いのか。理由としてよく挙げられるのが、日本人の勤勉さだ。手を抜かず、真面目によりよいものを追求する国民性が、企業を存続させるという。

兵庫県は100年以上続く老舗企業数が全国6位。海外との貿易が盛んな神戸があるためか、その業種も多種多様だ。

日本酒の生産量が全国1位を誇る兵庫だけに、酒造メーカーの老舗は数多い。さらに海・山・川を有する兵庫の豊かな食を彩る醤油や酢など調味料の製造、被服や皮革といった衣料関連、建築業やサービス業など、業種の多様さも興味深い。

(*1)東京商工リサーチ「全国『老舗企業』調査」
(*2)2008年、韓国銀行調べ

老舗の原点を示した河合寸翁

さまざまな老舗が今も伝統を紡ぐ兵庫。勤勉に、よりよいものを追求するという老舗の原点を、藩の改革という形で示した人物がいる。姫路藩家老の河合寸翁(道臣)だ。

江戸後期、藩の収入の約7年分にあたる73万両もの借金を抱えた姫路藩を、寸翁はさまざまな改革で再建に導いた。

その改革は、港の整備や新田、未開墾地の開発など多岐に及ぶが、財源が確保できた理由は、昔からの産業を発展させると共に、新産業を生み出したことだ。木綿や和菓子など、寸翁の指示により生み出された産業は長く続き、今や老舗として地域を支えている。

勤勉さだけが老舗存続の理由とは思えない。さらなる理由を求めて、兵庫の老舗を訪れた。

次ページからのポイント

江戸時代の姫路木綿を現代に / 棉屋

新たな付加価値を目指す / 後藤工務店

地酒を飲んで生産者支援 / 「播州蔵酒を飲み干す会」「本家串焼 忠助」