《本記事のポイント》
- メルケル氏が目指す、国連でもEUでもない新たなる世界組織の構想とは
- 『永遠平和のために』から見たメルケルの政治哲学
- トランプ氏とメルケル氏の理想実現は、本当に対立しているのか?
2005年より約13年にわたってドイツの首相を務めるメルケル氏。その間、あたかもEUの守護神のように欧州全体をまとめてきた。だがそのEUに亀裂が入りつつある。
一つ目の事件は、ギリシャ債務危機。ドイツは均衡財政を至上命題として財政運営を行う。そのためギリシャ財政危機に対して、積極的な財政支援をためらい、国際社会から批判を受けた。2018年現在でも、ギリシャ債務問題は、根本的な解決に至っていない。
さらに2015年の難民流入が直接の引き金となり、イギリスは国民投票の結果EU離脱を選択。ドイツ国内では、反ユーロを旗印とした政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が急速に勢力を伸ばすなど、右派政党が台頭している。
イタリアでも、EU懐疑派の政党「五つ星運動」が連立政権の担い手になった。ハンガリーでは、オルバン・ビクトル首相は国境に移民流入を防ぐフェンスを設置。ポーランドでも反移民を掲げる保守政党「法と正義」が政権を握った。
欧州統合の理想のもと、各国は無理矢理に結びついた。しかしその結果、次々と表れる現実の綻びに、人々の間で不満が高まっている。
トランプvs.メルケル
EU指導国として窮地に立たされつつあるドイツのメルケル氏だが、主権を重視し始めたアメリカとも気まずい関係が続く。
トランプ米大統領就任後、2017年3月における初顔合わせでも、二人は記者に握手を促されても、そっぽを向き合っていた。その後も難民、国際機関への考え方において、水と油のごとくそりが合わない状態が続いてきた。
トランプ氏の政治信条は、各国の独立と主権を尊重する立場だ。9月の国連における一般討論演説でも、昨年に引き続き、「主権」「愛国心」「独立」といった言葉を繰り返した。
トランプ氏は、国連やWTOなどの国際組織は、国という単位に優越するとは考えていない。まず各国が自国の発展に責任を持ち、自立した関係があってこその国際機関という立場だ。
一方、メルケル氏は、欧州内でも国際的にも、あくまでも国々の統合を護る立場で対立している。いわゆるグローバリズムの立場に近い。
そんな彼女の信念はどこから来ているのか。また昨今、ドイツは「帝国」や「覇権拡大」のために、EUを賢く使っているのではないかという声も聞こえてくる。それはメルケル氏が意図していることなのか。
内政的にも外交的にも、難しいかじ取りを迫られる中、大川隆法・幸福の科学総裁は、9月28日「Spiritual Interview with the Guardian Spirit of Prime Minister Merkel(メルケル首相の守護霊霊言)」を収録した。
この霊言の中で、メルケル氏の衝撃の過去世が明かされた。啓蒙時代の哲学者で、知の巨人であるエマニュエル・カントであることが判明したのだ。
となると、メルケル氏の政治哲学の根源が自ずと浮かび上がる。霊言は、本来見えなかった本心やトランプ氏との対決理由が如実に見えてくる内容となった。
メルケル氏が目指す、国連でもEUでもない新たなる世界組織の構想とは
メルケル氏の守護霊は、「ドイツの首相として何を成し遂げたかったのか」を聞かれると、こう応えた。
「 世界の平和のために、世界を単一の組織にすることです 」
「 EUは第一段階で、次の段階は世界的組織です。現在の国連よりも力があるものです 」
だがそれは決して全体主義的なものではない。すべての国が「平等」で「独立」しているが、それぞれの国が抱えている重要問題を共通の場で議論し、そうして出した結論に従うものだという。
カントの『永遠平和のために』からみたメルケル氏の政治哲学
これはまさに、生前カントが企図したことと同じである。「どうすれば戦争が起きなくなるのか」を追究したカントは、1795年、自由な国家に基礎を置く、国際的連合を創ることを提唱した『永遠平和のために』を執筆している。
国家間の紛争というものは、放っておくと戦争状態に陥りがちだ。当時は、植民地主義で、いたるところで人間を奴隷化し植民地から収奪していた時代。
国内においては、三権分立など、人々の自由を守る枠組みがある。対外的な関係でも、人間が野蛮な状態を抜け出すには、戦争を抑止する何かが必要だと考えた。つまり、カントにとって平和とは人間の営みによって創り出さなければならないものであった。
では、その平和はどう創出されるべきものか。カントは、国家の上位の機関を創ることを考えた。
しかし、ここで誤解してはいけないことがある。カントは、単に国境のない世界政府を創ればよいと考えていたわけではない。メルケル氏の守護霊霊言でも語られているように、あくまでも「自由な国家の連合」に基礎を置く世界的な組織を創ることであった。
もし国際的なレベルで専制的な政府が成立したら、各国、又は各国の国民は、自分で自分の未来を切り開く自由を奪われてしまう。カントにとって、国民一人一人は「目的」であって「手段」であってはならなかった。だからこそ、「自由な国家の連合」に基づく世界的な組織を創ることで、国際レベルでも公的な領域に自由を確保しようとしたといえる。
その証拠として、カントは少数の意見が抹殺される状態を嫌っていた。今回の霊言でも、対話によって多くの意見が反映されることを希望していた。メルケル氏守護霊は、「 平時においては十分な対話がなければいけないでしょう 」と述べていた。公の討論を重んじる立場からすると、トランプ氏のともすれば強権的にも見えるやり方に対しては、違和感を持つのかもしれない。
しかし霊言においても、守護霊のカントは、EUや国連の限界も認識していた。そのことからも、一般に誤解されているような国際協調主義のための、国際主義ではないことも判明した。
ちなみに、カントの永遠平和の理想は、第一次大戦後、ウィルソン米大統領などによって実現され、国際連盟、さらには現在の国際連合(国連)となっていった。だが「自由な国家の連合体」であるはずの国連に、「共産主義国家」中国が常任理事国に含まれるなど、現在の国連は、カントの理想とは遠いものになっている。
世界平和の実現への道のりが異なるトランプ氏とメルケル氏
「戦争のない世界秩序をいかにつくるべきか──」。
トランプ氏とメルケル氏の理想は一致していることが浮かび上がってくる。トランプ氏は、愛国心を強調し、対中国については、対米貿易黒字を減らし、同国の軍事力の資金源を断とうとしている。二国間での問題解決で、共産主義国による軍事覇権を止めようとしていると言える。
メルケル氏の本心も、主権や愛国心を否定してはいない。戦争を憎み、平和を実現したいという理想は、一致する。両者は同じ理想へとどう辿り着くべきかという方法論が異なっているだけかもしれない。
霊言の最後で、メルケル氏守護霊は、「 中国人はドイツ人を尊敬しています。私たちが中国を変えていける 」と述べるなど、蜜月関係が心配される独中関係もいずれは変化を遂げる日が近いことを示唆した。
迫りくる脅威となりつつある中国の問題に対して、トランプ氏とメルケル氏が今後、どう折り合いをつけて、対中包囲網を築いてゆくことができるのか。行く末を注視したい。
また、カント哲学の理想の具現化であったEUが綻び始めたのも事実。メルケル氏守護霊も、その限界から眼をそむけてはいなかった。それでも自由な諸国家の統合を目指すメルケル氏の理想の追求は止まない。理想と現実の折り合いをどうつけるのか──。それが今後の課題と言える。
本霊言では、その他に以下の点についても、メルケル氏の本心が披露された。
- なぜドイツは移民を受け入れるのか。
- 共産党の一党独裁は、何が問題か。
- EUの崩壊はやってくる。
- アメリカの法は世界を統べる法となり得るのか。
- 来世紀に実現したい夢とは。
- 軍事力については、どう考えるべきか。
- 儒教には全体主義的な傾向がある?
- 中国とどう決着をつけたいと考えているのか。
- メルケル氏守護霊の篤い信仰心とは。
ここに紹介したのは霊言のごく一部です。詳しくは幸福の科学の施設で、ぜひご覧ください(下記参照)。
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【関連書籍】
幸福の科学出版 『公開霊言 カントなら現代の難問にどんな答えをだすのか?』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1635
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2018年9月28日付本欄 イエス・キリストが伝える、ドイツとEUの未来へのアドバイス