照屋教育長に報告書を答申後、豊見城市役所で第三者委員会が開いた記者会見。

《本記事のポイント》

  • 沖縄県の小4自殺の「いじめが主要因」と結論付ける報告書を第三者委が提出
  • 報告書は、学校側と市教育委員会がいじめの事実を隠ぺいしたことを示す内容
  • 子供の命を守るには、学校側のいじめ隠ぺいに対する罰則を設けた法律が必要

沖縄県豊見城(とみぐすく)市で2015年10月、当時小学4年の男児が自殺した問題で、市の教育委員会が設置した第三者委員会はこのほど、2年以上にわたる調査を行い、「学校でのいじめが自殺の主な要因だった」と結論付ける報告書を照屋堅二教育長に答申した。

報告書によると、男児が自殺を図るおよそ5カ月前から、「ズボンをおろされる」「複数で男児の筆箱をパスして回される」「服を引っ張られる」など、少なくとも5件のいじめがあったことが明らかになっている。

自殺前にSOS出すも学校側の対応はなし

男児は自殺を図る2週間前、学校で行われたアンケートでいじめ被害を訴えていたにもかかわらず、学校側は何の対応もしていなかったという。

第三者委員会の委員長を務める天方徹弁護士は記者会見で、「男児は学校のアンケートに『いじわるされ転校しようと思っています。どうしたらいいですか』と記していて、これはSOSだった。これに対して何も対処されず、その後もいじめが続いてしまった。学校が法律の定める通りに対応していれば、結果は違っていたと考える」と指摘。学校側の適切な対応で、自殺は防止できた可能性が高いと語った。

学校側は「いじめの事実」を否定し続けた

照屋堅二教育長(左)に報告書を答申する、第三者委員会の天方徹委員長。

男児の自殺後も、学校側はいじめの事実を一貫して否定し続けた。さらに自殺の原因については、学校でのいじめではなく、家庭に問題があったとも述べていたという。第三者委員会は、男児の自殺後もこうした対応を繰り返した学校側に対し、「自らを正当化し、保身を図る行為。教育者としてあってはならない」と厳しく批判した。

亡くなった男児の両親は弁護士を通じて、こう述べている。

「私たちは学校や市教育委員会に対して真相解明や事情の説明を求め続けてきましたが、誠意ある対応はありませんでした。報告書では、息子がいじめを受けて苦しんでいたという事実や、私たちが風評被害により地域の中で肩身の狭い思いをしてきたことなど、事実に沿ったものとなっており、評価したいと思います。息子の死が少しでも今後のいじめをなくすことに役立つことを願います」

報告書を受け取った照屋教育長は会見で「報告書の中にある『学校で適切な対応がされていれば防ぐことができた』ということを真摯に受け止めたい」と述べ、謝罪した。

学校側のいじめ隠ぺいへの罰則も必要

第三者委員会の委員を務めた、那覇市PTA連合元会長の徳留博臣(とくとめ・ひろおみ)氏は、編集部の取材にこう語る。

「学校側の対応には数々の問題点がありました。まず、男児がいじめに悩んでいたにもかかわらず、教師がいじめと認識せず、加害者に実効的な対応が出来なかったこと。また、男児が自死した後にアンケートを確認するという怠慢と危機管理意識のなさ。さらに批判を恐れてか、学校側の発言が二転三転したことなどです。

学校や教育委員会はいじめの事実を否定しただけでなく、家庭に問題があったのではないかという主張をし、最後まで遺族に寄り添うことはありませんでした。

第三者委員会の答申では、教師の意識改革、いじめ対策の専任教師の配置などが提言されました。いじめを本気でなくしていこうとする学校が評価される環境づくりとともに、学校や教育委員会の隠ぺいから子供を守るためには、一定の罰則規定が必要です」

いじめに苦しむ多くの児童、生徒を救うための法整備が急務だ。

(小林真由美)

【関連サイト】

一般社団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」

http://mamoro.org/

【関連書籍】

幸福の科学出版 『教育の法』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=49

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2017年9月13日付本欄 ジャパン・タイムズ紙が子供の自殺問題を特集 いじめ隠ぺいに対する憤りの声

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2015年7月9日付本欄 岩手いじめ自殺は止められなかったのか? いまだに残る隠ぺい体質

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2015年8月28日付本欄 いじめ対処を大阪市教育委が明確化 隠ぺい教師に懲戒処分も

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