プロ野球のセ・リーグでは、横浜DeNAベイスターズ(以下、横浜)が、クライマックスシリーズを突破し、日本シリーズ出場を決めた。大洋ホエールズ時代の1960年、横浜ベイスターズ時代の98年から3回目。長い「暗黒時代」をくぐり抜けたチームが、ついにここまで来た。

その鍵は、一言で言えば、関係者全員が「自分たちにできることをした」ということだろう。

「自分にできることをする」を徹底した球団と監督、選手

横浜の「暗黒時代」とは何か。98年に日本一になった後は、19年間で最下位が10回。「どうせ勝てない」とチームの士気が下がり、いつしか練習もいい加減になる。主力選手は「優勝したい」と他のチームへ移籍していった。監督は2年おきに変わるが、何も変わらない。この間のエピソードは、『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』(村瀬秀信著、双葉文庫)として出版されている。

そして親会社が代わった2012年、球団名は「横浜DeNAベイスターズ」に変わる。球団がまず努力したのは「チームの勝敗に関係なく、まず球場を観客でいっぱいにする」ことだった。

横浜の町と一体となったプロモーションを行ったり、30代から40代の男性をターゲットに、会社帰りに気軽に球場に足を運べる雰囲気を作った。空席だらけだったスタジアムは、数年で満席になった。

12年から監督を務めた中畑清氏も忍耐の連続だった。最初は、選手に挨拶をしても反応がない。ゲキを飛ばしてもコーチしか反応しない。そんな冷めきった状態だったが決して諦めず、選手を信じ、励まし続けた。チームの雰囲気は次第に明るくなった。

中畑監督は若い選手に期待をかけて育てることに徹した。その中で、現在主力の筒香嘉智選手をはじめとしたメンバーが育っている。この時代を支えたのは、チームが勝てなくとも、倦まず弛まず努力を続けていたベテラン選手たちだった。

スタジアムがファンでいっぱいになると、選手も奮起する。観客動員数アップの立役者である横浜DeNAベイスターズ前社長の池田純氏は、選手から「次は俺たちの番ですよね」などの言葉を聞いたという。

2016年にアレックス・ラミレス監督が就任すると、シーズン3位となり、クライマックスシリーズに出場。2位の巨人を破ったが、1位の広島には敗れた。

いざという時の心のコントロール

今年のクライマックスシリーズでは、横浜はシーズン2位の阪神に勝ち、昨年敗れた広島が相手だった。しかし最終戦の第1戦で雨が降り、広島が3点を先制したところで、5回でコールドゲームになったことに、横浜の選手の中には不満の声もあったという。

そこでキャプテンの筒香選手は、選手を集めて話をした。「天気には勝てない。終わったことを言っても取り戻すことはできない。切り替えて明日、勝とう!」。

次の日から横浜は3連勝し、日本シリーズ出場を決めた。

その筒香選手だが、5月25日にあばら骨にデッドボールを受け、骨折の疑いを抱えながらも平然をよそおい、上半身にさらしを巻いて出場。7試合ヒットが出なかったが、その間、30打席中8回フォアボールで出塁するなど踏ん張った。さらに6月には首のヘルニアを発症。バットを振るたびに激痛が走ったというが、それを隠して試合に出続けたという。

万全ではないコンディションの中でも、シーズンを通してのホームランは28本でセ・リーグ4位。プレーヤーとしてだけでなく、チームの士気を高めるキャプテンとしての責任ゆえの行動だろう。

現在の横浜の強さは、それぞれの立場で努力の余地があることに集中してベストを尽くしたことで、得られたものであることは間違いない。

自力の中に、他力が臨む

実力が拮抗するチーム同士が戦えば、最後はどちらに「神様がほほ笑むか」で勝負が決まる。昨年は、リーグ優勝した広島の「神ってる」が流行語大賞に選ばれていた。

横浜のラミレス監督は敬虔なクリスチャン。勝利インタビューはいつも、「神様に感謝したい」という言葉で始まる。そんなラミレス氏は今年8月、「野球の神様」の声を聞いたと、報道陣に語っている。「今週が勝負どころ」といったことや、「この場面でこの投手を使う」など、選手起用についてもささやかれるという。

「一番したくないのは、神様が語りかけてくれているのにそうしないで、やっておけばよかったということ」と話すラミレス監督。ちなみに「判断の90%はデータ」といい、決して神頼みばかりしているわけではない。

「天は、自ら助くる者を助く」という。過去がどうであれ、現在がどうであれ、自分たちにできることはやりつくし、最後に神がかる瞬間に、人は感動を覚えるのだろう。

(河本晴恵)

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